銀座ニコンサロンの松本欣二写真展「媽媽(まま)」を見る

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 東京銀座の銀座ニコンサロンで松本欣二写真展「媽媽(まま)」が開かれている(3月19日まで)。これがとても良かった。松本は1988年大阪府生まれ、2012年に日本写真映像専門学校を卒業している。2011年には日本広告写真家協会APAアワード2012写真作品部門 金丸重嶺賞を受賞している。
 ニコンのホームページに松本の言葉が載っている。

母親は台湾人。父親は知らない。僕は日本で生まれました。母はほとんど家にいてなく台湾人ということもあり、お互いにあまり会話がありませんでした。そのせいか一緒に暮らしていましたが距離感と違和感があり、母との思い出はあまりありませんでした。そして僕が10歳の時に母は何者かに殺害されました。それからずっと母には背を向けて生活をしていましたが、僕にも家族と子供が生まれ、親になり改めて「家族」というのを見つめ直しました。そして、子供の時には気づかなかった母からの愛情を気づくようになりました。この作品は母を見つめ直すのと同時に自分自身を見つめ直した作品となっております。母、子供、父親、親子とは何かと思いながら制作しました。(松本欣二)

 

 会場に入って左側の壁の写真から見て回る。昔の写真と題された写真が何点か並んでいる。およそ写真展に飾るのがふさわしいとは思えない古いコンパクトカメラで撮ったようなプリントだ。91.3.16と日付の入った男の子が花火をしている写真、94.3.16と日付が入った卒園の写真、パスポートの複写があり、松本が88年8月20日生まれだと分かる。国籍は日本。
 新聞記事のコピーが複写されている。その新聞記事は松本の母親が事件に巻き込まれて殺されたことを報じるものだった。次に母親が最後に吸っていた煙草の吸殻が写っている。ついで母親が行っていた喫茶店、母親が作ってくれた一番好きだった料理としてパンに卵焼きを挟んだ写真、母親と行った喫茶店のホットミルク、昔住んでいたマンションの扉、台湾にある母の墓を訪ねる旅行、小さなロッカーの墓と骨壺。
 事件を報じる古い新聞記事の母親の写真は美人だったことがうかがえる。そういえば松本もハンサムだ。写真展の後半は松本の家族、とくに息子を中心に展示されている。わだかまっていた母親への心境が解放されたことがよく分かる。とても良い写真展だった。
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松本欣二写真展「媽媽(まま)」
2019年3月6日(水)-3月19日(火)
10:30-18:30(最終日15:00まで)日曜休館
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銀座ニコンサロン
東京都中央区銀座7-10-1
電話03-5537-1469
http://www.nikon-image.com/activity/exhibition/