自分のことが分からなかった

 先日、TS4312の山本弘遺作展の初日、画廊のオーナーの依頼でギャラリートークをした。山本弘の生涯を簡単にまとめて話した。話し終わって質問の時間に、画家の石原さんから、アル中の普通じゃないような画家のどこに惚れたのかというような質問があった。思ってもいなかった質問なのでちゃんと答えられなかったと思う。世間では評判が悪かったけど、本当はシャイで良い人だったとか言ったような気がする。
 石原さんの隣に私の古い友人が座っていた。彼は高校のときからの親しい友人で、初めて山本弘の家に連れて行ってくれたのも彼だった。
 終わって二人で食事をした折、友人が私に代わって石原さんに語ったことを教えてくれた。曽根原は破滅型の人間が好きなんだと。例として、山本弘と友人の活司、それに原和を挙げた。言われればその通りで自分では全く気付いていなかったので驚いた。
 山本は軍国少年だったのが終戦で価値感が混乱し、あげくにヒロポン中毒や自殺未遂、アル中などにのめり込み、重症のアル中のあげくに51歳で自死してしまった。活司は作家を目指していたが、やはり酒におぼれ30代半ばで肝臓がんで亡くなった。原和は学生運動のゲバルトで大けがをし、その後小林秀雄を読んで政治に挫折し、以後酒と麻雀と囲碁とパチンコにのめり込んだ。パチンコではサラ金に2度も大きな借金を作った。最後は酒以外は胃が受け付けないほどのアル中になり、やはり50代半ばで自死した。私は3人とも大好きだった。
 以前娘が、父さんの知り合いって自殺した人とうつ病の人が多いねと言った。言われて、お互い自分にないものに引かれるのかもしれないと答えたのだった。しかし、私が破滅型の人間が好きだとは全く自覚していなかった。自分のことが意外にわかっていないことを知った。
 そうか私は破滅型の人間が好きだったのか。