Steps Galleryの中村ミナト展を見る

 東京銀座のSteps Galleryで中村ミナト展が開かれている(1月21日まで)。中村は1947年、東京生まれ。1969年に武蔵野美術大学彫刻家を卒業し、1970年に同大学専攻科を卒業している。ときわ画廊で10回個展を開いたほか、1975年以来各地のギャラリーで個展を繰り返している。作品は東京や京都の国立近代美術館に収蔵されている。




 今回アルミの大きな作品が1点だけ設置されている。基本形は1辺が164センチくらいの正方形らしいが、それぞれの辺が傾けられて接合されていて、複雑な形態を見せている。アルミ製なので200kg程度の重量だというが、いやそれはハンパな重さではない。とくにSteps Galleryはエレベーターのないビルの5階なので、搬入は苦労したのではないか。とはいえ、画廊主吉岡まさみがテキストに書いているとおり、重量を感じさせない佇まいだ。そのテキストの一部を引く。

 中村ミナトの彫刻の特徴は、面が空間を切りながら、われわれの居るこの3次元空間の豊かさと複雑さを、金属の質感を伴いながら、静かに語りかけてくるところにある。(中略)
 アルミニウムという金属の質感を極限まで抑えながら、その量感をも消し去って、ただ金属の板を折り曲げることによって空間の磁場を作っていくという手法で制作を続けている。(中略)
 中村の彫刻は実際に持ち上げて運ぶとなると、下手に力を入れすぎるとぎっくり腰になりかねないほど重いのだが、いったん会場に設置されてその空間に納まると、いとも簡単にその重さを失い、儚いと呼んでもいいような、存在を消し去るような佇まいを見せる。(後略)

 吉岡の論評はとても巧くて、美術家・ギャラリー代表と名乗っているが、評論を主体にした方が成功するのではないかと、ちゃちゃを入れたくなる。吉岡の書くブログもとてもおもしろい。
 奥の部屋には小さな作品マケットがたくさん並んでいる。エアコンの風に揺れている中空のアルミの作品も壁から下がっている。中にはコペンハーゲンの空気が入っているそうだ。
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中村ミナト展
2017年1月10日(火)―1月21日(土)、日曜休廊
12:00―19:00
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Steps Gallery(ステップス・ギャラリー)
東京都中央区銀座4-4-13 琉映ビル5F
電話03-6228-6195
http://www.stepsgallery.org/