藍画廊の吉岡朝美展を見る

 東京銀座の藍画廊で吉岡朝美展を見る。吉岡朝美は1987年北海道生まれ、2010年東北芸術工科大学芸術学部彫刻コース卒業、2012年同大学大学院芸術文化専攻彫刻領域を修了した。

 藍画廊では2020年に続いて3回目の個展になる。



 画廊の中央に小さな雲のようなものが多数漂っている。それはテグスで天井から吊られているので、ふわふわとわずかな動きもある。

 藍画廊のホームページに本展について紹介されている。それを引く。

 

画廊の中央に漂うように浮かぶ、朧気な白い物体。

それは半透明のメッシュのような形態で、小さな袋のようなカタチをしています。

数は80個ほどでしょうか、近づくと揺れ、ホワイトキューブの中で目の焦点がなかなか合いません。

何かの仕掛けがあるわけでもなく、映像のイリュージョンでもない、不思議な光景です。

しばらく位置を変えながら見ていると、その美しさに魅せられていきます。

例えてみれば、最近テレビで放映された「霧の彫刻」のような空間そのもののが生む美しさです。

見えているのに、実体(実態)が掴めない、空間の変容に包まれるような体験です。

実体そのものは、極薄の和紙と透明な糸です。

和紙が天井から糸で吊されているだけです。

そして、その薄い和紙ゆえに僅かな空気の動きで揺れます。

その揺れが、空間に作用して、インスタレーションはその時々で表情を変えます。

ある種のホワイトアウトが、起きているようにも思えます。

わたしは何を見ているのでしょうか、あるいは何も見ていないのでしょうか。

𠮷岡さんの今回の作品は出産が契機になっています。

前回は祖父の死でした。

つまり、身近な生と死にインスパイアされた作品です。

何も無いところから何かが生まれ、何かが在ったところから何かが消える。

それは本当だろうか。

もしかしたら、何かは何かから生まれ、何かは今でも在るかもしれない。

見えないのは無いのではなく、気配のように漂っているかもしれない。

そんな感想が浮かんでは消え、再びわたしは近づくと揺れる何かを見ようとする。

 

 撮影がとても難しかった。画廊のスタッフの方に後ろに立ってもらって撮影した。

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吉岡朝美展「ただよい、かわらずにあるもの」

2023年10月9日(月)-10月14日(土)

11:30-19:00(最終日は18:00まで)

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藍画廊

東京都中央区銀座1-5-2 西勢ビル3階

電話03-3567-8777

http://igallery.sakura.ne.jp/