いりや画廊の寺本幸弥彫刻展を見る

 東京入谷のいりや画廊で寺本幸弥彫刻展が開かれている(8月19日まで)。寺本は1997年福岡県生まれ、2020年に九州産業大学芸術学部を卒業している。今回が初個展となる。

 彫刻家前田哲明がギャラリーのホームページに書いている。

画竜点睛を欠くという言葉がある。

寺本幸弥君の彫刻、それは一見すると不完全な人体像のフォルムを呈しているが、その言葉は微塵も当てはまらないことに誰もが気が付く筈である。私は、むしろ最近の具象彫刻とは一線を画するものであるように思えてくる。例えば、力強い空洞化された人体のフォルムの中に、繊細な彩色の施された和紙を貼り込むことにより完成度を高められているのだが、それで完結するのではなく、その先に展開できる可能性を感じさせるものが存在しているのである。

 


 寺本はFRPで彫刻を制作している。しかし通常の制作方法とは異なり、粘土の原型に薄くFRPを貼り、粘土を取り去ったあと、FRPの外側と内側に和紙や金箔を張り付けている。空洞化された人体が寺本の作品である。人体は空洞化され、頭部はいったん作ったのち破壊されているかのようだ。つまり寺本の人体像は二重の空虚、ネガなのだ。でありながら、その量感は確実に伝わってくる。若い彫刻家が東京で最初の表現を展示している。

     ・

寺本幸弥彫刻展

2023年8月7日(月)―8月19日(土)

11:30-19:30(土曜日・祭日17:30まで)日曜休廊

     ・

いりや画廊

東京都台東区北上野2-30-2

電話03-6802-8122

http://www.galleryiriya.com

東京メトロ日比谷線入谷駅出口1より徒歩1分

JR上野駅入谷口より徒歩10分、鶯谷駅南口より徒歩8分