Stepsギャラリーの吉岡まさみ展「待合室」を見る

 東京銀座のStepsギャラリーで吉岡まさみ展「待合室」が始まった(7月20日まで)。タイトルが「待合室」でサウンドインスタレーションとなっている。DM葉書に簡単な説明が書かれている。

音声を使って病院の待合室を模した空間をギャラリー内に作ります。

事務所には板に彫刻刀で描いたスクラッチドローイングを展示します。

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 ギャラリーに入ると壁面に大きな図形が描かれている。小さな原画を壁面に投影してそこにICテープを貼り付けたものだ。吉岡のいつものインスタレーション作品同様、テープを貼るのは吉岡ではなくスタッフに任せている。

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 事務所の中には同じ図形を板に彫ったものが12点、それよりやや小さい作品が9点展示されている。より大きな作品のうちの1点を取り出して写真に示した。12点の作品の内の上から2段目、右から2列目のものだ。
 彫刻刀で彫った線はわずかによれているような表情を見せている。それと絵具の下から覗いている木目(年輪)と相まって幾何学的な形ながら無機的なよそよそしさとは真逆な装いを見せている。
 スピーカーからは絶えず音声が流れ、名前を呼んでいる。タイトルの「待合室」の患者を呼ぶ声を表しているようだ。なぜ待合室かと尋ねれば、作品に共通して描かれている図形がラビリンス=迷宮だからだと言う。大きな病院の待合室は患者があふれ、いつ自分の名前が呼ばれるか、あたかも迷宮のようだという。
 主展示室の壁に大きな図形を投影して描き、そのミニチュア版を事務所内に展示して販売している。この吉岡の展示戦略が素晴らしい。そして、その図形の発想が吉岡の通う病院の待合室の混雑ぶりからヒントを得ているとすれば、つくづく吉岡は知的な作家だと感心してしまう。制作に際して感性よりも知性を優先する作家として、ジャッドやステラ、バーネット・ニューマン、モーリス・ルイスなどを連想すると言えばほめ過ぎか。
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吉岡まさみ展「待合室」サウンドインスタレーション
2019年7月10日(水)-7月20日(土)
12:00-19:00(日曜休廊、土曜日17:00まで)
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Steps Gallery(ステップス・ギャラリー)
東京都中央区銀座4-4-13 琉映ビル5F
電話 03-6228-6195
http://www.stepsgallery.org
東京メトロ銀座駅B1・B2出口より徒歩1分