『6度目の大絶滅』を読む

 エリザベス・コルバート『6度目の大絶滅』(NHK出版)を読む。1年ほど前に養老孟司毎日新聞に紹介していた(2015年5月31日)。

 地球上からほとんどの生物がいなくなってしまう。そういう大事件が地質学史上でこれまで5回起こっている。これをふつう大絶滅と呼ぶ。その最後つまり5度目が白亜紀末期で、この時に恐竜が絶滅したことを多くの人はご存知であろう。ほぼ500万年前のことである。
 では6度目の大絶滅とはなにか。著者はそれを現代だとする。ヒトのさまざまな活動が地球環境を変化させ、生物に巨大な影響を与えているからである。

 世界のカエルが死滅しつつある。ツボカビの伝染による。ツボカビを世界中にばらまいたのは人間だ。ノルウェーからフロリダ州まで広く分布していたオオウミガラスは全盛時数百万羽いたのに、これも人間によって絶滅された。
 オゾン層破壊物質の発見によりノーベル賞を受賞したオランダの化学者パウル・クルッツェンは、人類が地質学的規模で引き起こした多くの変化として、次のような数項目を指摘した。

・人類は地表の3分の1から半分に手を加えた。
・世界中の主要な河川の大半はダムが建設されたり、切り回されたりした。
・肥料工場が、すべての陸上生態系によって自然に固定される量を上回る量の窒素を生産している。
・海洋の沿岸水域における一次生産(独立栄養生物による有機物生産)の3分の1以上が漁業に消費される。
・人間が世界中の容易に入手可能な淡水の半分以上を使う。

 クルッツェンによれば、人類が大気の組成を変えてしまい、化石燃料の燃焼と森林破壊により、大気中の二酸化炭素濃度はこの2世紀で40%上昇し、より強力な温室効果ガスであるメタンの濃度は2倍以上になった。
 6度目の大絶滅はすでに大きく進展しているように見える。それはわれわれ人類が引き起こしているものだ。われわれは生活の便利さを追求してきた。子供たちに住みやすい世界を与えたいと願ってきた。十分な食べ物を与えることを望んだ。それらの行く末がこの大絶滅なのだろう。
 人類の犯した大きな罪の淵源は人口増にあるように思う。日本に限っても、古田隆彦が『日本人はどこまで減るか』(幻冬舎新書)で人口容量が限界に達していると書いている。

 歴史をひもとけば、日本の人口容量には4つの壁があった。1.旧石器時代の3万人、2.新石器時代は26万人、3.大陸から粗放農業文明が流入し700万人(10世紀ごろ)、4.水田稲作文明を高度化させた集約農業文明により3250万人(1730年ごろ)−−をそれぞれ上限とした。そして今は、科学技術を基礎にした加工貿易文明によって増えた人口容量が限界に達している。

 この人口問題に関しては、長谷川真理子「セントキルダ島の羊」と竹内久美子「ロイヤル島のヘラジカ」を読んでほしい。
 地球にとってもう遅すぎるのだろうか。あるいは6度目の大絶滅の後に生まれてくるだろう新しい生物とともに地球は何事もなかったかのように太陽を公転するのだろうか。


「ロイヤル島のヘラジカ」(2013年7月23日)


6度目の大絶滅

6度目の大絶滅

日本人はどこまで減るか―人口減少社会のパラダイム・シフト (幻冬舎新書)

日本人はどこまで減るか―人口減少社会のパラダイム・シフト (幻冬舎新書)