『老人と猫』を読む

 ニルス・ウッデンベリ『老人と猫』 (エクスナレッジ)を読む。著者はスウェーデンの心理学者で大学でも教えている。70歳を超えて妻と二人暮らし。10月末にアフリカ旅行から帰ってしばらくすると、見知らぬ猫が物置小屋に住みついているのに気がついた。この一戸建てのほか別にマンションも持っていて旅行するのも好きなので猫を飼う気はなかった。そのうちに出て行くだろうと思っていたが、マンションで2週間ほど過ごして帰ってみると、雪が積もっていたのに物置の中にはまだ猫がいた。迷い猫じゃないかと近所にビラを貼ったり警察に相談したりもした。そして結局飼うことになった。
 その猫キティは雌だったので去勢をし、自由に外出できるように猫専用の扉を作ってもらう。狩りが好きで、ネズミをしばしば獲ってくる。ほかにも小鳥、子ウサギなどを獲ってきた。猫に尻尾が付いている理由を著者は考察する。しかし、結論として「猫に尻尾がついている理由、これは猫の謎の最たるもののひとつだ。果たして科学で解明される日は来るだろうか?」と書いている。ネコ科動物に尻尾があるのはバランスを取るためだってことも知らないのだ。NHKテレビの「ダーウィンが来る」を見れば、アフリカ草原のチーターがガゼルを狩るとき、長い尻尾を使って急カーブをしながら獲物に迫る映像を見ることができるだろう。
 総じて著者は猫のことを知らない。本書を書いたときキティを飼い始めてまだ2年弱しか経っていない。その間に生じた劇的なことはキティが3日間いなくなったことぐらいだ。いわゆる感動的なエピソードが皆無なのだ。
 また本書は原稿量がとても少ない。一応239ページはあるものの、1ページの文字数が少ないのだ。1行の文字数が30字しかない。さらにイラストページが27ページある。すると、400字詰め原稿用紙で220枚程度になる。岩波新書三浦雅士夏目漱石』に換算すれば130ページほどだ。つまりコストパフォーマンスはあまり高くないと言わざるを得ない。


老人と猫

老人と猫