小倉美恵子『オオカミの護符』を読む

 小倉美恵子『オオカミの護符』(新潮社)を読む。本書を読もうと思ったのは、1月15日付け毎日新聞の書評欄に田中優子がとても良い書評を載せていたからだ。その後、2月5日付け朝日新聞にも田中貴子の書評が掲載された。毎日の田中優子の原稿量は朝日の田中貴子の倍はあるし、内容はそれ以上だった。
『オオカミの護符』は東急田園都市線鵠沼およびたまプラーザ駅近くの「土橋」という土地の農家に生まれ育った著者が、土蔵に貼られていた護符に興味を持ち、調べていく過程で分かったことを書いている。その護符には「武蔵國/大口真神御嶽山」とあり、黒い獣の絵が描かれていた。祖父母はそれを「オイヌさま」と呼んでいた。調べていくと護符は御嶽講という行事によってもたらされていることが分かった。御嶽講では青梅市にある武蔵御嶽神社に参詣し、オオカミを描いた護符をいただいて帰り、それを魔除けとして戸口に貼っていた。
 著者はオオカミ信仰を調べるうちに、それが奥多摩秩父、山梨を中心とする神社に多いことを知り、秩父の三峰山へと至る。
 秩父へ行く。第6章「関東一円をめぐる」を読んで驚いた。

 栃原さんに付き添われ、お隣の「宝登山神社」に向かうと、口ひげをたくわえた少々強面(こわもて)の神官さんが待っていた。
 曽根原正宏さんは、50歳代とお見受けするが、背筋がピンと伸びて白の着物に紫紺の袴の神官姿が凛々しい。キビキビとした姿で境内を案内してくださった。

 なんと、ここに現れた曽根原正宏さんは、私の元義弟、正確には私の娘の母親の弟だった。事前に予期していなかったから驚いたのだった。そういえば彼の勤める宝登山神社の祭神は狼だった。著者が宝登山神社を訪れるのは当然のことなのだ。「少々強面」と書かれているが、若い頃はハンサムでもてていたのだった。
 著者は映画のプロデューサーで、本書の前に同じ内容で映画を作っているという。その映画には元義弟も出演しているらしい。一度見てみたいものだ。


オオカミの護符

オオカミの護符