損保ジャパン東郷青児美術館の「GLOBAL NEW ART」を見た(8月31日まで)。「タグチ・アートコレクション」という副題で、現代美術の平面作品が並んでいる。タグチというのはミスミの元社長、現在エムアウトの社長田口弘氏のことで、個人コレクションらしい。
実は2002年〜2003年に東京都現代美術館で開かれた「WE LOVE PAINTING ミスミコレクションによるアメリカ美術」もタグチ・アートコレクションだった。この時もアメリカの43作家、約100点の作品が展示された。これは半端なコレクターではない。
掲示されたテキストを読むと、最初にキース・ヘリングの作品に注目してコレクションを始めたらしい。ヘリングは落書きアートの作家で、決してまともな画家ではない。しかし田口は収集を続けるうちに目が肥えていったのだろう、こんなにも優れたコレクターになったのだ。コレクションの質の高さでは、最近評判の「高橋コレクション」をはるかに超えている。
出品されている作家を見ると、ロイ・リキテンスタイン、アンディ・ウォーホル、デミアン・ハースト、村上隆、奈良美智、大岩オスカール、加藤泉、名和晃平、などなど。作品によっては軽く億を超えるだろう。ミスミもエムアウトも、どんなに儲かっているのか。
最後にちょっとだけ意地の悪いコメントを。辻井喬・上野千鶴子の対談「ポスト消費社会のゆくえ」(文春新書)より。
上野千鶴子 ピエール・ブルデューの『ディスタンクシオン−社会的判断力批判』(藤原書店・1990年)はお読みになりましたか? 彼はそのなかで、「前衛芸術はどのような人によって選好されるか」という問いを立てています。前衛芸術は評価の定まらないものです。評価が定まったものではなくて、定まらないものに対して価値を見出すのは成り上がりの新興ブルジョワジーであると、明確に書いています。それはなぜかというと、「前衛芸術とは旧ブルジョワジーに対する自己差別化の記号だからだ」と。
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「タグチ・アートコレクションGLOBAL NEW ART」
2011年7月12日(火)〜8月31日(水)
10:00〜18:00、月曜日休館
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損保ジャパン東郷青児美術館
東京都新宿区西新宿1-26-1 損保ジャパン本社ビル42階
電話03-5777-8600
http://www.sompo-japan.co.jp/museum/

- 作者: 辻井喬,上野千鶴子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/05
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