磯江毅展を見てその巧さに舌を巻く

 練馬区立美術館で磯江毅展を見る(10月2日まで)。スーパーリアリズム、あまりの巧さに舌を巻く。磯江は1954年大阪生まれ、大阪市立工芸高校を卒業後、まもなく単身でスペインへ渡り、30年以上スペインで活躍したという。
 裸婦と静物が見事だ。ほとんどの作品が個人蔵になっている。磯江は2005年に広島市立大学芸術学部の教授に就任したが、2007年53歳で急逝した。今回美術館で見るまでこの作家のことを何も知らなかった。
 静物画の瓶や金属の缶などには薄くほこりが溜まっている。それはジョルジョ・モランディを思わせる。磯江の静物画もモランディと同じく、静かな動きのない画面だ。磯江はおそらくモランディが好きだったのだろう。鳥の巣も何度も描いている。難しいテーマに挑戦したかったのだろう。
「シーツの上の裸婦」は左右155cmもある大作で、本当に見事なものだ。これが29歳のときの作品。「新聞紙の上の裸婦」は左右182cmの大作で40歳のとき、「鰯」は左右53cm、亡くなる直前の作品だ。
 自画像も展示されていたが、とても良い顔をしている。誠実な人柄が現れているようだ。
 リアリズムの技法は感嘆するほどのものだ。そうして私なんかが小さな異議を申し立てるのが憚られるのだが、静物画の静態的な構図に少々不満を感じたことを言い添えておきたい。もっとも巧みなスーパーリアリズムの作家に共通する傾向でもあるようだが。

シーツの上の裸婦

新聞紙の上の裸婦


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磯江毅=グスタボ・イソエ
−真実の写実絵画を求めた画家の遺作展−
2011年7月12日(火)−10月2日(日)
10:00−18:00、月曜日休館(ただし9月19日は開館、翌20日休館)
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練馬区立美術館
東京都練馬区貫井1-36-16
電話03-3577-1821
http://www.city.nerima.tokyo.jp/manabu/bunka/museum/