3人のイラストレーター

 教育社の月刊誌「NEWTON」編集部の電話番号は外部に公開していません、どうして分かったのですか。「NEWTON」で使っているイラストレーターを紹介してほしいと思って電話したら、そう言われた。以前「NEWTON」に企画を提案したことがあって、その時直接編集部に電話するよう言われた電話番号をメモしておいたのだ。企画は採用されなかったが。
 その後「NEWTON」編集部でイラストレーターを手配していた人が独立し、その方を通じて「NEWTON」に関わっている大勢の優れた精密なイラストを描くイラストレーターたちを使えることになった。
 それとは別に、気に入ってたまに付き合ったことがあるイラストレーターが3人いた。空山基、斎藤雅緒、瀬戸照だ。空山はセクシーロボットが有名で、最近はソニーのアイボをデザインしたことでポピュラーになった。特にイラストの巧いことでは仲間内で定評がある。広告に使うためにペガサスのロボットを描いてもらった。以前の事務所は壁にアメリカの雑誌から切り取ったヌード写真が所かまわず貼ってあった。幼稚園に通っている娘が友だちを連れて事務所に遊びに来る。その友だちたちがお母さんに話すらしく、外出するとお母さんたちから変な目で見られると言っていた。
 斎藤雅緒は野菜や果物のスーパーリアリズムのイラストで知られている。写真にまがうほど本当に巧いのだ。ひと頃よくジュースのパッケージなどに使われていた。自宅で仕事をするのは孤独らしく、打ち合わせで訪ねると2〜3時間は話を聞かされた。それが政治や経済、社会のさまざまなことについて一家言を持っているのだ。普段話す相手がいないのだろう。
 瀬戸照とは実は一度も仕事をしたことがない。彼のイラストは一番好きなのに。何と言っても遅筆なのだ。細い面相筆を使って点描で描いている。1つの作品を仕上げるのに何日もかかってしまうのだ。広告の仕事は納期が問題になる。一度も日程が合わなかった。有ネガ(以前描いたものをポジフィルムで撮影してある)を借りようとした時も、玄光社にあると思うと言われたが、玄光社の担当者からあるはずだが見当たりませんでしたと言われてしまった。これが斎藤雅緒だったら「どんな仕事も3日間あれば完成するよ」。
 銀座2丁目の画廊スパンアートギャラリーで数年に1度、瀬戸照イラスト展が開かれる。ここは種村季弘の息子さんが経営している画廊だ。そして瀬戸照には種村季弘との共著「石のはなし」があった。