ものすごい快感を知ったネズミ

進化しすぎた脳―中高生と語る「大脳生理学」の最前線 (ブルーバックス)
 いま評判の池谷裕二「進化しすぎた脳」(ブルーバックス)に面白いエピソードが紹介されていた。

 〈報酬系〉というのはやっぱり脳の部位なんだけど、これをはじめて見つけた経緯というのが面白いんだ。ケージ(飼い籠)のなかでネズミを入れて、そこにレバーを設置しておく。同時に、ネズミの脳に電極を刺しておく。それで、ネズミがレバーを押すと自分で自分の脳を電気刺激できるような装置をつくる。
 ネズミを観察しているとわかるんだけど、絶対にレバーを押したがらないところと、レバーを押すのを好む場所とが出てくる。たぶんだけど、刺激されると気持ち悪いとか気持ちいいとか、そういうのがネズミにもあるんだね。
 で、あるとき、ものすごい場所が見つかったんだ。そこに刺さった電極に電流が流れ刺激が加わると、ネズミはもう死ぬまでレバーを押し続ける。きっとね、すごく気持いいんだよ。快感なんだ。つまり、そこに電気を流して神経を活発化させるとものすごく気持いい場所、というのがある。
 それを知ったネズミは、自分でレバーを押して電流を流せるわけだから、自分の快感をコントロールできる。そうすると、もう水も飲まない、餌も食べない、ずっとレバーを押し続ける。そのくらい快感に感じる場所があるというのは驚きでしょ。それで、その場所を〈報酬系〉と呼ぶようになった。

 人が覚醒剤にはまるわけだ。聞いた話だが、子宮筋腫で入院するとモルヒネを注射して痛みをおさえてくれる。何度目かの入院のとき激痛に耐えながら、またあの注射がしてもらえると期待している自分に気がついたという。