安丸良夫『神々の明治維新』を読む

 先に読んだ安丸良夫現代日本思想論』(岩波現代文庫)があまりに良かったので、同じ著者の『神々の明治維新』(岩波新書)を読む。副題が「神仏分離廃仏毀釈」、36年前に初版が出版されたものだ。
 明治維新の前後から国学の影響で神道関係者が力を持ち、 神仏分離廃仏毀釈の運動を進めるようになった。維新政府が成立してからは、その中枢に働きかけ神道を日本の国教とするよう運動する。江戸時代まで神社には寺院も併設されており、むしろ寺院の力の方が強かった。
 明治維新後、神仏分離の布告が出されたりして、また明治政府成立の混乱に伴って、地方などで過激な廃仏毀釈が実行されていく。津和野藩では明治維新直前に行われたが、明治元年以降に強力な廃仏毀釈が行われた地方は、隠岐佐渡薩摩藩土佐藩、苗木藩、富山藩、松本藩などだった。仏教を排撃し、寺院を襲って仏像仏具などを破壊し、家々の仏壇などもすべて破壊した。寺院も廃滅した。路傍の石仏、庚申塚などもことごとく破壊した。すさまじい破壊だった。僧は還俗させた。
 もっとも抵抗したのは真宗門徒だった。真宗僧俗が一貫して廃仏毀釈に抵抗し、その運動によって行き過ぎた廃仏毀釈への反省が生まれ、狂信的な廃仏運動が下火になった。
 最後に安丸は書く。神仏分離以下の諸政策は、国民的規模での意識統合の試みとしては、企図の壮大さに比して、内容的にはお粗末で独善的、結果は失敗だったともいえよう。しかし、国体神学の信奉者たちとこれらの諸政策とは、国家的課題にあわせて人々の意識を編成替えするという課題を、否応ない強烈さで人々の前に提示してみせた、と。
 結果は失敗だったとはいえ、神仏並存だった多くの寺社で分離が行われ、たくさんの神社が独立したことは事実だった。松本には長野の善光寺に匹敵するほどの寺院があったが、打ち壊されて現在は鐘楼くらいしか残されていない。


神々の明治維新―神仏分離と廃仏毀釈 (岩波新書 黄版 103)

神々の明治維新―神仏分離と廃仏毀釈 (岩波新書 黄版 103)