世界を征服した4人の映画監督

 淀川長治が世界を征服した4人の映画監督を紹介している。(『銀幕より愛をこめて』朝日新聞社)。「サイレントの時代」と題した章の中なので、サイレント映画の監督ということなのだろう。

(……)アメリカにはデビッド・ワーク・グリフィスという人と、セシル・B. デミルという人、エーリッヒ・フォン・シュトロハイム、そしてチャップリンがいましたが、この4人が世界を征服しました。どのように征服したか。
 チャップリンは、オモシロくてオモシロくてしかたないけれど、その中に人間の悲しみと喜び、その両方を笑いで見せる偉い人、偉い偉い偉い人。
 シュトロハイムは、映画とは美男美女の甘いロマンスだけじゃない。キタナイ顔、キタナイ男、キタナイ女。ドブ板を踏んで歩くような裏長屋。そういうところの人間をとらえて映画にする。映画のリアリズム。スターのきれいな顔ばかりが映画じゃない。これがシュトロハイム
 グリフィスは何か。グリフィスは映画とは詩である。ポエムである。映画とは愛である。恥を受けるくらいなら死んだ方がいい。これが私の映画だ。グリフィスはそう言う。
 デミルは、映画とは娯楽である。映画は女性のために作らねばならない。女性は映画を見たら必ず電話で友達に、よかった、よかったと言ってくれる。男はそんなことはしない。だから、映画は女性に見せるんだ。きれいなスター、豪華なファッション、それを映画の中に入れなくちゃいけない。デミルはそんことを言った。

 チャップリンシュトロハイム、グリフィス、デミルの4人が映画で世界を征服したんだ。覚えておこう。
 

銀幕(screen)より愛をこめて

銀幕(screen)より愛をこめて