牧野邦夫展「写実の精髄」を見る


 東京練馬区立美術館で牧野邦夫−写実の精髄−展が開かれている(6月2日まで)。牧野は1925年東京生まれ、1948年に東京美術学校油画科を卒業している。1966年、レンブラントに憧れてオランダを中心に滞欧して研究している。1986年、多くの人に知られることなく61歳で亡くなった。ちらしの言葉から、

高度な油彩の技術で、胸中に沸き起こる先鋭で濃密なイメージを描き続けた牧野の生涯は、描くという行為の根底に時代を超えて横たわる写実の問題と格闘する日々でした。レンブラントへの憧れをを生涯持ち続けた牧野の視野には、一方で伊藤若冲葛飾北斎河鍋暁斎といった画人たちの系譜に連なるような、描くことへの強い執着が感じられます。また、北方ルネサンス的なリアリズムと日本の土俗性との葛藤という点では、岸田劉生の後継とも見られるでしょう。



 作品は大きく分けて、多数の自画像と裸婦などの人物画、それに物語性の強い群像を描いたものが目立つ。自画像や裸婦の描写はその優れた写実性に圧倒されるようだ。数点の作品を毎日並行して少しずつ描き、長い時間をかけて完成させていったものだという。裸婦などの肌の輝きが見事で、高い描写技術を持っていたことがよく分かる。
 それに対して群像を描いた大作は成功しているようには思えなかった。画面に複雑な構造を持ちこみ、複数の場面をコラージュするように組み合わせて物語を組み立てている。その手腕は見事なものだが、それが絵画として大きな達成に至っていないように見える。
 練馬区立美術館では2011年に磯江毅展が開かれている。磯江も優れた写実画家だった。優れた写実画家の系譜を企画してくれる美術館として、一つの特色を示しているのではないか。
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牧野邦夫−写実の精髄−展
2013年4月14日(日)−6月2日(日)
10:00−18:00、日曜休館
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練馬区立美術館
東京都練馬区貫井1-36-16
電話03-3577-1821
http://www.city.nerima.tokyo.jp/manabu/bunka/museum/