銀座三越美術画廊オープン

 白井晟一 が設計した銀座4丁目にあった親和銀行東京支店の建物が壊され、そのあたり一帯が再開発されて銀座三越の新館が作られた。

 ※今はもうない親和銀行東京支店の建物については、
  http://www.citta-materia.org/?itemid=267

 その銀座三越が9月11日にオープンした。5割の増床で銀座では一番広いデパートになったという。早速8階にできた画廊へ行ってみた。オープニングに取り上げられたのは青木克世の立体だった。青木は陶でケーキのデコレーションのような立体を作っている。不思議な形でロココ調を思わせてちょっと豪華な感じもする。しかしインテリアのような機能はなく、やはり美術品以外のものではない。
 22日からの第2弾の個展に予定されているのは金子奈央だ。彼女はかつてのスタイル画を連想させる女性像を描いている。青木、金子の二人とも現代美術でありながら、装飾的でもある。この辺が三越好みといったところか。
 現代美術に関しては高島屋の方が数段優れている。日本橋高島屋には昔コンテンポラリーアートスペースがあったし、現在はX画廊があり若手の現代美術作家の個展をやっている。新宿高島屋も広いスペースで現代美術を扱っている。
 もっとも銀座三越の客層から考えればまずまず妥当な選択なのかも知れない。「ポスト消費社会のゆくえ」で上野千鶴子が言っていた。

ピエール・ブルデュー(1930-2002年)の『ディスタンクシオン−社会的判断力批判』(藤原書店・1990年)はお読みになりましたか? 彼はそのなかで、「前衛芸術はどのような人によって選好されるか」という問いを立てています。前衛芸術は評価の定まらないものです。評価が定まったものではなくて、定まらないものに対して価値を見出すのは成り上がりの新興ブルジョワジーであると、明確に書いています。

 三越の顧客は成り上がりではないので、現代美術には見向きもしないのだった。三越の画廊にしては結構前衛的と言えるだろう。

ポスト消費社会のゆくえ (文春新書)

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