2019-01-01から1年間の記事一覧

中村稔『回想の伊達得夫』を読む

中村稔『回想の伊達得夫』(青土社)を読む。伊達は書肆ユリイカの社主で、雑誌『ユリイカ』を創刊し、多くの戦後詩人を世に出した。ただし、現代の『ユリイカ』は別会社の青土社が発行している。 中村稔は詩人で弁護士、処女詩集『無言歌』を書肆ユリイカか…

アイザック・アシモフ『ファウンデーション』を読む

SF

アイザック・アシモフ『ファウンデーション』(ハヤカワ文庫)を読む。「銀が帝国興亡史」シリーズの1冊目、文庫で7巻全11冊の膨大なシリーズだ。壮大な宇宙叙事詩とある。文庫の巻末の宣伝文を7巻分つなげて書けば、 第1銀河帝国の滅亡を予測した天才科学者…

TOWEDの「CAVE」展を見る

東京墨田区京島のギャラリーTOWEDで「CAVE」展が開かれている(9月29日まで)。参加作家はうえだあやみ、衣真一郎、時山桜、石渡由菜の4人。ギャラリーのちらしから、 対象(風景、物体、もしくは出来事)をもとに、それが作品として再び現れるとき 視覚的情…

片山杜秀『革命と戦争のクラシック音楽史』を読む

片山杜秀『革命と戦争のクラシック音楽史』(NHK出版新書)を読む。2019年4月~6月、朝日カルチャーセンターで行われた講座「クラシック音楽で戦争を読み解く」の内容を再構成したもの、とある。ところどころ講義中を思わせる言葉遣いが残されているのは、片…

eitoeikoの千葉大二郎個展「期待される人間像」を見る

東京神楽坂のeitoeikoで千葉大二郎個展「期待される人間像」が開かれている(10月5日まで)。千葉は1992年鹿児島県奄美生まれ、2014年多摩美術大学絵画科日本画専攻を卒業し、2016年に東京藝術大学大学院美術研究科修士課程日本画専攻を修了している。つい最…

ギャラリーなつかの山羊蔵展を見る

東京京橋のギャラリーなつかで山羊蔵展が開かれている(9月21日まで)。山羊蔵は1989年東京都生まれ。2013年女子美術大学芸術学部工芸学科〔陶〕卒業、2015年同大学大学院修士課程工芸研究領域〔陶〕を修了している。2015年にギャラリーQで初個展。 山羊蔵は…

ex-chamber museumの鈴木知佳・鈴木のぞみ展「Monologue of the Blank」を見る

東京外神田のex-chamber museumで鈴木知佳・鈴木のぞみ展が開かれている(9月29日まで)。鈴木知佳は1982年生まれ、東京造形大学大学院を修了している。鈴木のぞみも東京造形大学の同級生だった由。 一見地味な作品が展示されている。ギャラリーに置いてある…

東京画廊+BTAPの菅木志雄展1stを見る

東京銀座の東京画廊+BTAPで菅木志雄展1stが開かれている(9月14日まで)。大きな作品は2000年制作のもの。ほかに壁面に合板と枝の小品が3点展示してあって、こちらは1983年制作のもの。 東京画廊は3回に渡って菅の過去の作品を展示するという。今回がその第1…

山内昌之・細谷雄一 編著『日本近現代史講義』を読む

山内昌之・細谷雄一 編著『日本近現代史講義』(中公新書)を読む。昨日読み終えて今朝の新聞を見たら半五段の大きな広告が載っていた(朝日新聞)。新書1冊だけの広告としては異例の扱いだ。“これぞ最新、最前線の「令和の日本史」!”とある。 14人の著者が…

資生堂ギャラリーの遠藤薫展を見る

東京銀座の資生堂ギャラリーで遠藤薫展が開かれている(9月22日まで)。これは第13回Shiseido art eggの一環で、今村文、小林清乃と3人が選ばれて順次個展をしている。のちにこの中からグランプリが選ばれる。 遠藤は1989年大阪府生まれ、2013年に沖縄県立芸…

井上ひさし『二つの憲法』を読む

井上ひさし『二つの憲法』(岩波ブックレット)を読む。二つの憲法とは、明治22年に発布された大日本帝国憲法と、昭和21年に公布された日本国憲法だ。井上はこの二つの憲法を比べている。 大日本帝国憲法について、井上が解説する。天皇は帝国議会を開会した…

スタニスワフ・レム『ソラリス』を読む

SF

スタニスワフ・レム『ソラリス』(ハヤカワ文庫)を読む。沼野充義による新訳だ。旧訳もハヤカワ文庫だったが、飯田規和はロシア語からの重訳だった。『ソラリスの陽のもとに』という題名で1965年に訳出された。私も1970年代に読み、強烈な印象を与えられた…

岡田暁生『音楽と出会う』を読む

岡田暁生『音楽と出会う』(世界思想社)を読む。第1章「音楽は所有できるのか?」を読み始めて、この読書は失敗だったと思ったが、章の終りに「My songがOur songになるとき」という小見出しがあって、伝説的な《ケルン・コンサート》のレコードの大ヒット…

堀啓子『日本近代文学入門』を読む

堀啓子『日本近代文学入門』(中公新書)を読む。副題が「12人の文豪と名作の真実」とある。「真実」というのはちょっとオーバーだが、内容は面白かった。6つの章でテーマを立て、2人の作家を比較していてそれが成功している。 近代小説が落語家の三遊亭円朝…

練馬区立美術館の坂本繁二郎展を見る

東京練馬区の練馬区立美術館で坂本繁二郎展が開かれている(9月16日まで)。「没後50年」とある。青木繁と久留米で同級生だったが、青木が若くして亡くなった後、58年も長生きして、文化勲章も受賞した。 坂本については、梅野満雄が書いた青木繁の伝記が強…

巷房の作間敏宏展「colony」を見る

東京銀座の巷房で作間敏宏展「colony」が開かれている(9月14日まで)。3階の巷房1では名前がたくさん書かれた平面作品が、また壁に並べられたタブレットには人の名前が列挙されて下からスクロールし、鮮明な画像やぼやけた画像が映っている。 また地下の…

ギャルリー東京ユマニテbisの安田萌音個展「Vestiges」を見る

東京京橋のギャルリー東京ユマニテbisで安田萌音個展「Vestiges」が開かれている(9月7日まで)。安田は1992年神奈川県出身。2015年に多摩美術大学日本画専攻を卒業し、2017年に同大学大学院博士前期課程絵画専攻を修了している。2016年にこの画廊で初個展、…

うしお画廊の石井紀湖展を見る

東京銀座のうしお画廊で石井紀湖展が開かれている(9月7日まで)。石井は以前はギャラリー山口で発表していたが、山口が閉廊したあとはみゆき画廊で個展を開いていた。今回は久しぶりにうしお画廊での発表だが、うしお画廊はみゆき画廊が発展したものなのだ…

無人島プロダクションの小泉明郎展を見る

東京墨田区に移転した無人島プロダクションで小泉明郎展:映像インスタレーションとVR(ヴァーチャル・リアリティー)インスタレーションが開かれている(8月31日まで)。 映像インスタレーション「Battlelands」は、同時に2面のスクリーンを使っている。こ…

阿佐ヶ谷のけやき屋敷再開発

東京の杉並区の中央線阿佐ヶ谷駅から100メートルほどの至近距離にけやき屋敷と呼ばれている大きな屋敷がある。敷地面積10,000平方メートル、約3,000坪、1辺100メートルの正方形に近い。ここが再開発で河北病院になるという。 左隣に杉並第一小学校があるが、…

詐欺師に会った

たとうを求めて新宿の世界堂へ行ったが、注文して2週間かかると言われた。お茶の水の文房道へ行ったら3日間でできるという。それを注文してお茶の水駅まで戻った。暑い中坂道を登って行ったが、半分口を開けてぼうっとした顔をしていたのだろう。見知らぬ男…

山本弘展は明日が最終日

東京渋谷のアートギャラリー道玄坂で開かれている山本弘展も今日が6日目だった。明日25日が最終日となる。今回の目玉は30号の「種畜場」だ。山本自信の白が美しい。霧をモチーフにしたさの作品の美しさを実際に見てほしい。 ・山本弘展8月19日(月)-8月25…

山本弘の作品解説(70-2)「白い顔」

山本弘「白い顔」、油彩、F30号(91.0cm×73.0cm) 制作年不詳だが、1978年10月に飯田市で開かれた生前最後の個展に展示された。以前この作品の解説として、「題名から白い顔が描かれているのだろうが、どれが眼鼻かと考えるとよく分からない」と書いた。現在…

湊千尋『インフラグラム』を読む

湊千尋『インフラグラム』(講談社選書メチエ)を読む。インフラグラムという言葉は湊の造語で、「情報化社会のインフラとなった写真や映像」のことだという。デジタル化されて写真や映像は世界を席巻している。世界に溢れている。 港はデュシャンを参照した…

半藤一利『「昭和天皇実録」を読む』を読む

半藤一利『「昭和天皇実録」にみる開戦と終戦』(岩波ブックレット)を読む。「昭和天皇実録」を読み込んで、開戦と終戦に関する昭和天皇の関与を分析している。 軍部は日中戦争の泥沼化を打開しようと南部仏印に進駐することを企てる。天皇が各国に影響を及…

山本弘展が始まる

東京渋谷のアートギャラリー道玄坂で山本弘展が始まった(8月25日まで)。今回ベテラン画家のOさんに手伝ってもらって展示をした。私が採用したい作品をOさんが除き、私があまり評価しない作品をOさんは採用した。それはとても刺激的な体験だった。評価=好…

明日(8月19日)から山本弘展が始まる

明日(8月19日)から東京渋谷のアートギャラリー道玄坂で山本弘展が始まる(8月25日まで)。今回DM葉書に使ったのが「雪の三叉路」という私の好きな作品だが、もう1点一番好きな「川」も出品する。「川」は2004年のギャラリー汲美での個展に出品したが、その…

山本弘の作品解説(91)「(題不詳)」

山本弘「(題不詳)」、油彩、F4号(33.5cm×24.0cm) 1977年制作。何が描かれているのだろう。首があるし、角状のものも描かれている。すると鬼だろうか? では顔の前の白い三角は何だろう。 おそらくそのような理屈ではないのではないか。造形的に面白いと…

山本弘の作品解説(90)「(題不詳)」

山本弘「(題不詳)」、油彩、F6号(41.0cm×31.8cm) 1977年制作。顔が描かれているように見える。大人の顔ではないか。頭の上にちょっと離れて角にも見えるものが描かれている。画面下方にも描かれているのは象徴的に描かれた体だろうか。顔らしきもののみ…

来週8月19日から山本弘展が始まる

来週8月19日から東京渋谷のアートギャラリー道玄坂で山本弘展が始まる(8月25日まで)。そのちらしを紹介する。 表紙 裏表紙 中面 中面の図版部分 中面の文章は、こちらに書いている。https://mmpolo.hatenadiary.com/entry/2019/07/07/222758 裏表紙の図版…