山本弘「(題不詳)」、油彩、F6号(41.0cm×31.8cm)
1977年制作。顔が描かれているように見える。大人の顔ではないか。頭の上にちょっと離れて角にも見えるものが描かれている。画面下方にも描かれているのは象徴的に描かれた体だろうか。顔らしきもののみやや精密に描かれ、それ以外は思いっきり省略している。
制作年の1977年というのは山本弘47歳、前年から断酒して作品制作に没頭していた。1976年から78年にかけて3年間で4回の個展を開いている。それも公民館の大きな会場を借りて、1回に油彩をそれぞれ50点ほど発表している。おそるべき創作力だ。
しかし2年間の断酒ののち1978年からは再び酒を飲み始め、1979年の作品は少なく、1980年は1年間入院していて作品はない。1981年に退院して間もなく亡くなる。
だからこの46歳から48歳にかけての3年間は奇跡的に多作し、それがみな見事な造形作品となっている。山本弘豊穣の歳月なのだ。