資生堂ギャラリーの遠藤薫展を見る

 東京銀座の資生堂ギャラリー遠藤薫展が開かれている(9月22日まで)。これは第13回Shiseido art eggの一環で、今村文、小林清乃と3人が選ばれて順次個展をしている。のちにこの中からグランプリが選ばれる。
 遠藤は1989年大阪府生まれ、2013年に沖縄県立芸術大学工芸専攻染めコースを卒業している。2016年に志村ふくみ主宰アルスシムラ卒業。

 遠藤の言葉を引く。

私はボロ布を一枚の新しい布に再生させています。それぞれの布には固有の素材や技法があるのみならず、使用されることで社会的な「事実」も既に織り込まれていると言えます。
布が布らしく在るのは、使われ、損なわれ、修復される、という過程の反復があるからです。私はその反復をもう一度現代的に繰り返すことを試みます。
例えば、戦前の古布に空いた穴を蚕に修復させ、沖縄土着の記憶と米軍物資が混ざり合った古布を集めて縫い合わせ、それらを正しく雑巾や布として使用と修復を繰り返す、など。
そこには必然的に、戦争や労働、過去の人たちの生活の痕跡が残っています。

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 ギャラリーには古そうな布がたくさん吊下げられている。キャプションを読むと、
・古布は全て戦前に織られたもの。縫い糸で修復した跡は当時の人の手による。/その上に生きている蚕を這わせ、彼らが直接布に糸を吐き、古布の穴を修復する。
とか、
・かつて、沖縄の夏の普段着であった芭蕉布の端切れを米軍基地内のバナナの繊維などで縫い繋ぐ。/沖縄の型絵染(紅型)は戦後に米軍の薬莢や口紅を使って復興された。
などと書かれている。

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・誰かのおばあちゃんの集めていた石と錆びた鋤と裁縫箱、木、赤土、蚕の成虫と卵、古い糸巻き、芭蕉糸、苧麻糸、ハノイの市場でもらった糸、福島のおじいちゃんがくれた大麻糸、古い杼、苧麻焼畑で燃えた灰、珊瑚、紅型工房の古雑巾
     ・
遠藤薫
2019年8月30日(金)-9月22日(日)
11:00-19:00(日・祝―18:00)
     ・
資生堂ギャラリー
東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
電話03-3573-3901
https://www.shiseidogroup.jp/gallery/exhibition/