ex-chamber museumの鈴木知佳・鈴木のぞみ展「Monologue of the Blank」を見る

 東京外神田のex-chamber museumで鈴木知佳・鈴木のぞみ展が開かれている(9月29日まで)。鈴木知佳は1982年生まれ、東京造形大学大学院を修了している。鈴木のぞみも東京造形大学の同級生だった由。
 一見地味な作品が展示されている。ギャラリーに置いてあるテキストを鈴木知佳のfacebookから引く。

本展は、何気ない日常の事物に潜む潜像のような記憶を、光の跡/痕として写真の原理を通じて可視化することを試みる鈴木のぞみ、存在の起源を辿り、写す/遷す/映すことで事物が体現している時 ― 生成と消滅の繰り返しの内に在る、いま ― に臨もうと試みる鈴木知佳、二人の作家による、二度目の展覧会となります。
(中略)
本展「Monologue of the Blank」は、事物の過ごす時間に目を向け、それぞれの手法によって、日常の中ではとどめることのできない時間の流れを取り出し、留めようとする作品によって構成されています。

手紙を書くひとときに通り過ぎた光の痕跡を、便箋の置かれた空間ごと定着させた青写真のシリーズ「Letters of the Light」(鈴木のぞみ作品)と、モチーフとなる事物の姿形を彫り抜くことで、失われた質量分の空洞が透明アクリルの空間の内に浮かび上がる作品シリーズ「blank drawing」(鈴木知佳作品)には、現前にはない便箋一枚分の空白が触れ得るかのような時のイメージとなって浮かび上がってきます。

また、錆びた手押し車に空いた穴や排水溝の穴など、日常の小さな穴によって光が束ねられ、潜在している像をピンホールカメラの手法により写された事物の眼差しとも言えるような光景「Monologue of the Light」(鈴木のぞみ作品)や、路端・海岸等で採取した砂から、1ミリ足らずの砂粒と化したプラスチックやガラス、陶片等かつて何かだったものの欠片を識別し色ごとに並べた時の標本ともよべるような「名付けられた色の終わり 名付けられない色のはじまり」(鈴木知佳作品)には、日常からとりこぼされていった事物の置き去りにされた時間ではなく、寧ろ私たちが忘れ去られたとしても、人の過ごす時間を超えて続いてゆくであろう事物の刻々とした現在の時間がみえてきます。

何も書かれていない便箋やメモ用紙の空白、年月によって欠落してゆく事物が存在した分の空白から発せられる「Monologue of the Blank」に出合う場となれば幸いです。

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 鈴木知佳の作品が興味深かった。透明アクリル板の裏側を紙1枚分ほど繰り抜いて、作品としている。説明を聞くまでどうなっているのか分からなかったが、原理を知った後で見れば、なるほど支持体なしで空中に浮かんでいるように見える作品は、いわばネガとしてある(=ない)存在の痕跡のようなものの実体化なのだった。

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 またカラフルな微小な粒が100個(10×10)並べられているオブジェ様の作品は、甑島の海岸で拾ったマイクロプラスチックも含む砂粒を法則性をもって並べている。その法則は4隅に日本の基本色(白、黒、赤、青)を置き、それとの関係で並べているという。
 砂時計の砂も甑島の微小な砂粒を入れたもので、途中に引っかかっている大粒の砂もやがては摩耗して流れ落ちるだろうと。
 構成原理を知った後では作品が全く違って見えて興味深かった。

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 鈴木のぞみは現在北アイルランドに滞在して作品を制作しているとのこと。窓から室内に入ってくる光を感光させた青写真を展示している。
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鈴木知佳・鈴木のぞみ展「Monologue of the Blank」
2019年9月7日(土)-9月29日(日)
12:00-18:00(月・火・水休廊、9/16、9/23は開廊、9/20は16:00~)
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ex-chamber museum
東京都千代田区外神田6-11-4 3331アーツ千代田205号室
電話070-5567-1513
http://ex-chamber.seesaa.net
※地下鉄銀座線末広町駅4番出口から徒歩3分