2017-01-01から1年間の記事一覧

数寄和の吉川民仁展を見る

東京西荻の数寄和で吉川民仁展が開かれている(10月29日まで)。吉川は1965年、千葉県生まれ。1991年武蔵野美術大学大学院造形研究科油絵コース修士課程を修了している。1995年文化庁インターンシップ研修員。1990年に鎌倉画廊で初個展をして以来、同画廊や…

ガレリア・グラフィカbisのしまうち みか個展を見る

東京銀座のガレリア・グラフィカbisでしまうち みか個展が開かれている(10月28日まで)。しまうちは1987年、熊本県生まれ。2013年崇城大学大学院芸術研究科を修了している。一時スリランカに短期滞在し、2012年初個展をスリランカのコロンボで開いている。…

吉行淳之介『やややのはなし』を読む

吉行淳之介『やややのはなし』(小学館)を読む。晩年の吉行のエッセイを集めたもの。具体的には昭和57年から平成3年にかけて発表したもの。吉行は1994年に70歳で亡くなっているから、60歳前後のものだ。短いエッセイが49編集められているが、これらがみな面…

SPCギャラリーの柴田美智子展「変容」を見る

東京日本橋兜町のSPCギャラリーで柴田美智子展「変容」が開かれている(10月28日まで)。柴田は東京都江東区生まれ、詳しいことは分からない。1994年に日本橋好文画廊で個展を開き、その後もギャラリーフレスカ、スパン・アートギャラリー、新宿眼科画廊、ブ…

櫻木画廊の沓澤貴子展-watcher of the sky-を見る

東京上野桜木の櫻木画廊で沓澤貴子展-watcher of the sky-が開かれている(10月29日まで)。沓澤は1971年、静岡県生まれ、1996年に武蔵野美術大学造形学部油絵学科を卒業し、1998年に同大学大学院油絵コースを修了している。2001年ガレリアラセンで初個展を…

北斎の肉筆画

今週初めに知人の画家の個展のオープニングパーティーがあった。パーティーの会話のなかで北斎の名前が出ると、参加していた老画家Kさんが僕のところにこんなのがあるよと1枚のカラーコピーを取り出した。長い1本の竿を担いでいる男が描かれている。画面を左…

ガレリア・グラフィカbisの笠谷耕二展を見る

東京銀座のガレリア・グラフィカbisで笠谷耕二展が開かれている(10月21日まで)。笠谷は1964年東京都生まれ。2007年にイタリア フィレンツェに留学する。2008年帰国するが、日本とイタリアに工房を持ち制作活動を続けている。 2010年にエキジビット・ライブ…

大塚信一『反抗と祈りの日本画 中村正義の世界』を読む

大塚信一『反抗と祈りの日本画 中村正義の世界』(集英社新書ヴィジュアル版)を読む。今から40年前に52歳で亡くなった画家の作品論を中心とした評伝。ヴィジュアル版の名の通りカラー図版が豊富に使われている。 中村正義の評伝としてはすでに笹木繁男の『…

小林紀晴『ニッポンの奇祭』を読む

小林紀晴『ニッポンの奇祭』(講談社現代新書)を読む。小林は長野県諏訪地方出身の写真家で、小さいころから諏訪大社の御柱祭に触れてきた。諏訪大社は上社と下社からなり、そのそれぞれに2つの社がある。つまり4つの社があって、その4隅に柱を立てる。そ…

梅野叔子『空飛ぶ亀の狂詩曲』を読む

梅野叔子『空飛ぶ亀の狂詩曲』(文芸社)を読む。副題が「青木繁に魅せられた梅野家の断章」というもの。知人から興味深い本があるから読んでみないかと勧められた。長野県東御市に東御市立梅野記念絵画館がある。初代館長は東京京橋で画廊の藝林を経営して…

ギャラリー砂翁の及川伸一展「混沌をなぞる」を見る

東京三越前のギャラリー砂翁で及川伸一展「混沌をなぞる」が開かれている(10月21日まで)。及川は1949年東京生まれ。1980年から1992年まで独立美術に出品していたが、1992年からは個展を主な発表の場所としている。これまでギャラリー汲美、ギャラリーテム…

『ヘンリー・ジェイムズ傑作選』を読む

行方昭夫・訳『ヘンリー・ジェイムズ傑作選』(講談社文芸文庫)を読む。去年がヘンリー・ジェイムズ生誕100年だったことから企画されたらしい。5つの中短篇が収録されている。「モーヴ婦人」「五十男の日記」「嘘つき」「教え子」「ほんもの」で、心理小説…

ギャラリー椿の夏目麻麦展「Nights Out」を見る

東京京橋のギャラリー椿で夏目麻麦展「Nights Out」が開かれている(10月21日まで)。夏目は1971年生まれ、1998年に多摩美術大学大学院を修了している。その年にギャラリーQで初個展、以後ベルギーや東京の西瓜糖、藍画廊、Porte de Paris、ギャラリー椿など…

Stepsギャラリーの十河雅典展「トヨタやソニーで生きてきたんだよう」を見る

東京銀座のStepsギャラリーで十河雅典展「トヨタやソニーで生きてきたんだよう」が開かれている(10月14日まで)。十河は1943年東京生まれ。1969年に東京芸術大学を卒業している。Stepsギャラリーでは今回が8回目の個展になる。 画廊に足を踏み入れて驚いた…

ギャラリーαMの小松裕子展「鏡と穴―彫刻と写真の界面」を見る

東京東神田のギャラリーαMで小松裕子展「鏡と穴―彫刻と写真の界面」が開かれている(10月14日まで)。小松は1969年、神奈川県生まれ、写真は金村修に学んでいる。初個展は2009年にギャラリー山口で行った。以来、ギャラリーQ、トキ・アートスペース、The Whi…

スティーヴン・キング『書くことについて』を読む

スティーヴン・キング『書くことについて』(小学館文庫)を読む。これが面白かった。キングはアメリカのホラー小説のベストセラー作家だ。私は何か1冊だけ読んだ記憶があるが、題名を思い出せない。 本書はキングの自伝と小説の書き方からなっている。聡明…

ギャラリーブロッケンの深沢軍治展を見る

東京小金井市のギャラリーブロッケンで深沢軍治展が開かれている(10月9日まで)。深沢は1943年山梨県生まれ、1971年に東京芸術大学大学院美術研究科を修了している。今年の4月に銀座のうしお画廊で個展を開いていた。 ギャラリーブロッケンはJR中央線武蔵小…

櫻木画廊の中津川浩章展「描くことの根源へ 世界のはじめから存在している絵画」を見る

東京上野桜木の櫻木画廊で中津川浩章展「描くことの根源へ 世界のはじめから存在している絵画」が開かれている(10月15日まで)。中津川は1958年静岡県生まれ。和光大学で学び、個展をギャラリイK、パーソナルギャラリー地中海などで数回ずつ開き、その他、…

橋爪大三郎・大澤真幸『げんきな日本論』を読む

橋爪大三郎・大澤真幸『げんきな日本論』(講談社現代新書)を読む。二人の社会学者による日本の歴史に関する対談だが、古代史から明治維新直前までをテーマにしている。本書は3部に分かれ、はじまりの日本(古代史)、なかほどの日本(中世史)、たけなわの…

ギャラリーなつかの山川亜貴と鯨虎じょうの「たまびやき」展を見る

東京京橋のギャラリーなつかで「たまびやき」の山川亜貴と鯨虎じょうの2人がそれぞれ個展を開いている(10月7日まで)。「たまびやき」とは、多摩美術大学の工芸専攻の陶の選抜展で、先週の学部生に続いて今週は大学院生の二人が選ばれている。 まず小さな…

手嶋龍一『汝の名はスパイ、裏切り者、あるいは詐欺師』を読む

手嶋龍一『汝の名はスパイ、裏切り者、あるいは詐欺師』(マガジンカウス)を読む。著者の手嶋はもとNHKワシントン支局長、テレビニュースで何度も見かけていた。そんな経歴から国際政治の裏面に通じているようで、対テロ戦争を描いたノンフィクションやイン…

片山杜秀・島薗進『近代天皇論』を読む

片山杜秀・島薗進『近代天皇論』(集英社新書)を読む。片山は政治思想史研究者、島薗は宗教学者。二人の対談をまとめたものでとても読みやすい。 まず片山が司馬遼太郎の「司馬史観」を紹介する。 片山 島薗先生のお話を聞いていて、もうひとつ思い起こした…

アートギャラリー環の野津晋也展「ここの山、隣の雲」を見る

東京神田のアートギャラリー環で野津晋也展「ここの山、隣の雲」が開かれている(10月14日まで)。野津は1969年島根県松江市生まれ、1992年に鳥取大学農学部を卒業した。さらに2000年に東京芸術大学美術学部油画専攻を卒業し、2002年に同じく東京芸術大学大…

ギャラリーなつかの「たまびやき」を見る

東京京橋のギャラリーなつかで「たまびやき」が開かれている(9月30日まで)。「たまびやき」は、毎年ギャラリーなつかで開かれる多摩美術大学工芸学科/陶/選抜作品展だ。今年は第9回になり、参加している作家は、石井あや子、玖島優希、李愛琳、榊美智子…

半藤一利『其角と楽しむ江戸俳句』を読んで

半藤一利『其角と楽しむ江戸俳句』(平凡社ライブラリー)を読む。宝井其角は芭蕉の高弟、蕉門10哲の筆頭の俳人だという。其角の俳句を取り上げてそれを解釈してくれる。ところが其角の俳句は難しい。半藤が解釈してくれるのだが、それでも難解だ。具体的に…

誤解していた諺

吉行淳之介の『やややのはなし』(小学館)を読んでいたら誤解されている諺について書かれていた。「顧(かえり)みて他を言う」の意味について、何人かの知人にその意味を尋ねると皆その意味を誤解していたという。「自分自身にたいしての反省の上に立って…

片山杜秀『クラシックの核心』を読む

片山杜秀『クラシックの核心』(河出書房新社)を読む。バッハ、モーツァルト、ショパン、ワーグナー、マーラー、フルトヴェングラー、カラヤン、カルロス・クライバー、グレン・グールドの9人の音楽家を取り上げている。雑誌『文藝別冊』の特集に掲載したも…

谷村志穂『チャイとミーミー』を読む

谷村志穂『チャイとミーミー』(河出文庫)を読む。名前を聞いたことのある女性作家だけれど、著書は一つも知らなかった。表紙に猫のイラストがあり、飼い猫のエッセイだろうと見当をつけて手に取った。猫、可愛い可愛いみたいなエッセイじゃないだろうなっ…

柴田克彦『山本直純と小澤征爾』を読む

柴田克彦『山本直純と小澤征爾』(朝日新書)を読む。帯の惹句に「埋もれた天才と世界の巨匠」とある。さらに「日本のクラシック音楽の基礎を築いた二人の波乱万丈な人生」と。小澤征爾の言葉として、「僕はいつも彼の陰にいました。でも対抗心なんてまった…

TS4312の桑原盛行展を見る

東京都新宿四谷三丁目のギャラリーTS4312で桑原盛行展が開かれている(9月24日まで)。桑原は1942年広島県出身。1967年に日本大学芸術学部美術学科を卒業している。1968年にシェル美術賞展で1席を獲得した。同年サトウ画廊で初個展、その後伝説の南画廊やギ…