アートギャラリー環の野津晋也展「ここの山、隣の雲」を見る

 東京神田のアートギャラリー環で野津晋也展「ここの山、隣の雲」が開かれている(10月14日まで)。野津は1969年島根県松江市生まれ、1992年に鳥取大学農学部を卒業した。さらに2000年に東京芸術大学美術学部油画専攻を卒業し、2002年に同じく東京芸術大学大学院油画専攻を修了している。今までにアートギャラリー環や表参道のMUSEE Fなどで個展を行っている。野津は現在の日本では珍しいシュールレアリズムの画家だ。

 画廊の1階のスペースに展示されている大きな作品がある。古いビル群が描かれていて、遠くから手前に高速道路のような道が描かれている。ビルはみな古そうな様子をしており、外壁が崩れていたり裂け目が走ったりしている。窓ガラスは多く割れている。一番手前の建物は溶け出しているような様相をしており、そこから毛むくじゃらの腕が伸びている。その手はガラスの容器に入った食べ物、アイスクリームだろうか、それを掴もうとしているようだ。毛むくじゃらの腕の中から噴煙を上げている火山が出ていたり、人の裸の脚がのぞいていたりする。溶け出したような建物からは曲がった鋏が伸びていて、毛を切り取ろうとしているかのようだ。いつもながら不思議な絵だ。
 別の作品では建物の屋上にベッドが置かれていて、毛布の下には人が寝ているのだろうか、足元からは血がにじみ出しているようにも見える。毛むくじゃらの腕は他の作品にも現れている。






 野津はシュールレアリズムの作品を描き続けている。作品は一見荒唐無稽な状況を描いているようにも見えるが、野津なりの現代文明に対する批判なのだろう。現在とても貴重な作家だと思う。ぜひ多くの人が画廊に足を運び野津の作品世界に触れてほしいと思う。
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野津晋也展「ここの山、隣の雲」
2017年9月25日(月)〜10月14日(土)
11:00〜18:30(最終日は17:00まで)日曜・祝日休廊
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アートギャラリー環
東京都中央区日本橋室町4-3-7
電話03-3241-3920
http://www.art-kan.co.jp/
※JR神田駅東口を出て中央通りを右折し(三越方向へ向かい)、カメラのキタムラの先を右折、すぐに老舗の蕎麦屋「砂場」があり、その手前を左折するとすぐ。(徒歩3−4分)
あるいはJR新日本橋駅または地下鉄三越前駅下車、連絡通路にて2番出口より徒歩3−4分