『ヘンリー・ジェイムズ傑作選』を読む

 行方昭夫・訳『ヘンリー・ジェイムズ傑作選』(講談社文芸文庫)を読む。去年がヘンリー・ジェイムズ生誕100年だったことから企画されたらしい。5つの中短篇が収録されている。「モーヴ婦人」「五十男の日記」「嘘つき」「教え子」「ほんもの」で、心理小説の大家の作品を知ることができるという。とは言うものの、ジェイムズを読むのは初めてだった。なるほど日本の近代小説に大きな影響を与えているのだろう。作中人物たちの心理を微細に書き込んでいる。行動を描写するヘミングウェイやハードボイルドの作家たちとは真逆の方法だ。
 実によく書けていて見事なものだが、今から見れば心理描写を繰り広げる方法は古びてきている印象が強い。当時としては驚くような目新しさであったのだろうが、そのような部分から古びて行くのだろう。
 代表作の『ねじの回転』もまだ読んでいないが、もう強い興味は引かれなくなった。『ねじの〜』は面白いよと娘は言ってたが。