ギャラリーなつかの山川亜貴と鯨虎じょうの「たまびやき」展を見る

 東京京橋のギャラリーなつかで「たまびやき」の山川亜貴と鯨虎じょうの2人がそれぞれ個展を開いている(10月7日まで)。「たまびやき」とは、多摩美術大学の工芸専攻の陶の選抜展で、先週の学部生に続いて今週は大学院生の二人が選ばれている。
 まず小さな部屋のギャラリーなつかクロスビューアーツの山川亜貴展「つちのひと」を見た。山川は1993年沖縄県生まれ、2016年に京都精華大学陶芸コースを卒業し、現在多摩美術大学大学院工芸専攻陶研究領域に在籍している。今回が初個展となる。
 作品は一見なんだこれはという感じ。山川にコンセプトは? と訊くと顔ですとの答。3点の作品が言われてみればみな顔だった。平面作品ならデュビュッフェを想起するようなプリミティブな顔が作られているが、このような立体作品にしたことですばらしい造形作品になっている。土の塊のような陶の作品にどこか精神性が透けてみえるように感じるのは、山川が沖縄出身と知った私の贔屓目だろうか。



 大きな部屋であるギャラリーなつかでは、鯨虎じょう展が開かれている。鯨虎は「いさなこ」と読む。鯨虎の言葉。

生命が誕生し、潤い、成長し、枯れる。抗うことのできない生命の力に、私の眼差しは清らかな美しさではなく、醜悪で気持ちの悪い美しさというものを捉えている。
生命の放つ生々しいエネルギーに湧き上がる、気味の悪さと愛しさを、私は形によって表現している。

 また、画廊の壁に貼られた文章には次のように書かれている。

私の作品の土台は粘土で制作していますが、その上を覆う釉薬は、粘土・石・灰・ガラス・金属などの粉末を混ぜ合わせたものです。そのさまざまな物質が混合した釉薬同士や、土台の粘土に熱を加えることで、物質同士に変形と融着をさせ、一体化させることが私の作品の醍醐味です。







 この文章と作品を見れば、鯨虎の制作意図がよく分かる。かつて抽象絵画で筆触を追求したことを、鯨虎は陶という立体の物質感で追及しているのだろう。とても面白い試みだと思う。複雑に混合された釉薬の表情の面白さは、あるいは今後弁証法的に一皮剥けて新しい表現に行きつくのだろうか。興味深い試みだと思う。
 なお鯨虎じょうは本名今城芙美乃、女性作家である。
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山川亜貴展「つちのひと」
ギャラリーなつかクロスビューアーツ
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鯨虎じょう展
ギャラリーなつか
(共通して)
2017年10月2日(月)―10月7日(土)
11:00−18:30(最終日17:00まで)
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東京都中央区京橋3-4-2 フォーチュンビル1F
電話03-6265-1889
http://gnatsuka.com/