池澤夏樹の提言

 朝日新聞池澤夏樹が連載している「終わりと始まり」というコラムがある。1月9日は「三つの統計から見える日本」と題されていた。「日本が少しずつ衰退してゆくという印象はどこから来るのか」という一節で始まっている。

 平成が終わると聞いて振り返れば、この30年はずっと微量の出血が続いてきたような気がする。フクシマの汚染水に似ている。
 経済について言えば、最初にあぶく景気があったがそれはすぐにはじけた。余禄に与ってはしゃいだ人は国民の何割ぐらいいたのだろう。
 それ以来、政治は明かに劣化、格差の拡大を止められなかった。倫理の面でも、現政権ほど虚言と暴言を放出する閣僚たちは記憶にない。これが今も一定の支持を得ているところがすなわち劣化である。

 日本は育児支援後進国だ。

 「公的教育費の対GDP比率」という統計がある。これによると日本は3.47%で、154カ国・地域中の114位!
 はじめ嘘かと思った。
 最上位の北欧諸国は軒並み7%台。
37位のフランスが5.46%。
59位のアメリカが4.99%。
いつから、どうして、日本はこれほど子供たちへの出費をけちるようになったのだろう?

 女性の社会進出でも日本は後進国だ。

 この教育費と似たような順位表を見た覚えがある。
 女性の社会進出を測る「ジェンダーギャップ指数」で日本は149カ国の中の110位。
(どなたか、この2つの統計の間の相関係数を算出していただけないか。)
 更に、「債務残高の対GDP比」という統計を見ると、先進国中で日本は236%と断トツの1位。アメリカの108%の倍を超える。

 そして結論が、

 以上3つの統計から見えるこの国のかたち――
 出産や育児、教育の現場から遠いところに地歩を占めた男どもが既得権益にしがみついて未来を食い物にしている。彼らは日銀短観四半期より先は見ないようにしている。原発のような重厚長大産業に未来がないことを敢えて無視し、女性を押さえつけ、子供の資産を奪い、貧民層を増やしている。

 政治は明かに劣化している。