古い写真の撮影日は?



 10年前近くだったか、娘に促されて古い写真のネガをほとんど処分した。35年分くらいあったはずで大きな段ボール箱一杯あった。ネガを切り刻んで処分したが、それなりに手間がかかった。
 それより以前にほんのわずかだがネガからデジタル化したものがあった。古いパソコンの中のファイルにそれが入っていて、久しぶりに見たら室内が写っている。部屋の片隅にはカミさんが写っていて、板と軽石ブロックで組み立てた本棚も見える。その隅にカレンダーがかかっていて、8月を示している。これはいつだったのだろう?
 カレンダーでは8月1日が金曜日になっている。そこから年度が特定できないか調べてみた。「年サーチカレンダー」というサイトが見つかった。それで8月1日が金曜日に当たる年を調べると、1958年、1969年、1975年、1980年、1986年、1997年などとなっている。
 写っている部屋は公団住宅だ。1975年はまだ阿佐ヶ谷の1DKのアパートに住んでいた。1986年にはすでに娘が生まれていた。部屋の様子もカミさんの姿も子どもがいるようには見えない。すると、これは1980年の8月に撮影したものに間違いないようだ。
 記憶をたどるとたぶんこの年に阿佐ヶ谷から写真の墨田区公団住宅に引っ越してきたのだ。2DKだった。翌年娘が誕生している。では写真のカミさんは妊娠初期であり、おそらく本人もそのことに気づいていなかったのではないか。
 カレンダーの下にはソニーカセットデッキヤマハのレシーバーが写っている。本棚を構成している台はダイヤトーンのスピーカーだ。右上に見えるのは山本弘未亡人の愛子さんが描いた色紙。子どもの絵の横に愛子さんの詩「あの山をわたって雨がきた。こつこつこつ、まるでまぼろしの兵隊の足音」が書かれている。
 本棚にはル・クレジオの『調書』『大洪水』『愛する大地』『物質的恍惚』『向こう岸への旅』などや、ル・カレの『ドイツの小さな町』、吉行淳之介砂の上の植物群』、それに富岡鉄斎の画集が見える。下段に並んでいるのはカミさんの蔵書で『坂口安吾全集』だ。
 もう1枚の写真にはオリヅルランの鉢が釣り下がっている。ほぼ40年前の写真だった。