始弘画廊の工藤政秀展「記憶の森」を見る

 東京南青山の始弘画廊で工藤政秀展「記憶の森」が開かれている(4月7日まで)。工藤は1952年香川県生まれ、1974年に東京造形大学を卒業している。工藤の文章を引く。

 大学卒業後、抽象作品を個展(日辰画廊・ギャラリー葉等)やグループ展を中心に発表する。また海外の展覧会やアーティストレジデンスにも参加する。
 2011.3.11の大災害、その年の沖縄・渡嘉敷島での体験・制作、更に実父や義父母の死等から2011年から身体の一部分等の形が画面に現れる。ここ数年は特に顔や衣 服等を描くことが多い。








 今回の作品の制作方法を訊くと、筆を使わないでパレットナイフで描いているとのこと。そのためか硬質な線で描かれている。しかし前回、前々回に比べると今回は穏やかな表情をしている。前回までは筆触も描かれている像ももっと激しかった。
 工藤の文章から、

今回の展覧会タイトル 「記憶の森」時々、展覧会や作品のタイトルとする。/私の上を通り過ぎる様々な出来事や経験。そして沈潜していく記憶。「森」とはそこに或る諸々の関係の限りなく豊かな総体。いずれにしても私にとって絵画は時間や記憶との対話でもあるようだ。その対話は外側との世界に繋がることを強く願う作業でもある。

 始弘画廊での工藤の個展は今回で4回目になる。始弘画廊は不思議な空間で、地下1階に相当する。階段を下りていくとゆったりとした中庭があり、中庭をはさんで美容院と画廊が直角に面していて日本では珍しい立地ではないだろうか。ここに来ると野見山暁治が紹介したパリの椎名其二老人の住む地下のアパートを思い出す。あそこもこんな空間だったのだろうか。
 表参道のスパイラルのわきの露地を小原会館に向かって真っすぐ進むと小原会館の手前の左側に地下へ降りる階段があり、中庭が見下ろせる。そこが始弘画廊なのだ。
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工藤政秀展「記憶の森」
2018年3月26日(月)―4月7日(土)
11:00−19:00(最終日17:00まで)日曜休廊
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始弘画廊
東京都港区南青山5-7-23 始弘ビルB1
電話03-3400-0875
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