「井上ひさしの作文教室」は大変教えられた

 井上ひさし ほか「井上ひさしの作文教室」(新潮文庫)は当たりだった。面白くて実用的だ。読むことをお薦めする。
「自分を指す人称代名詞は、ほとんどの場合、全部、削ったほうがいい」「日本語は地域差が非常に大きい言葉」「日本語には階級差もあります。それから職業差は凄い」「日本語は言葉にすでに性別があるので、”〜と彼が言った”とか、”〜と彼女が言った”と書く必要がない」「司馬遼太郎さんは”思う”を漢字で書かない」「文章に接着剤を使いすぎるな」
 これらはすべて本書の小見出しだ。何と具体的で説得力があるのだろう。
 この「作文教室」は1996年11月15日から17日にかけての3日間、岩手県一関市で開かれた。あとがきで、こんなことを言っている。

 わたしも書く時間が残り少なくなってきました。あと10年も書ければと考えたり、できたら、13年、あと14年は、と考えたりしますが、15年は持たないと思っています。

 実際にこれを書いてから14年後の昨年2010年に井上ひさしは亡くなったのだった。井上の作品「ひょっこりひょうたん島」に接したのが46年前の1964年4月だった。高校の世界史の教師小宮山さんが、ぜひ皆見るようにと勧めてくれたのだった。本当に偉大な劇作家だった。


井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室 (新潮文庫)

井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室 (新潮文庫)