「人人展」の大熊雅博 追悼

 毎年「人人展」の招待状を送ってくれる大熊雅博さんから、ここ何年か送られてこなかった。それが今年田端麻子さんから送られてきた人人展の招待状に「特別展示 追悼・大熊雅博」とあった。
 会場で係の人に問い合わせると、大熊さんは昨年1月に癌で亡くなったとのことだった。56歳だった。大熊さんとは個人的な付き合いがあったわけではなかったが、もう10年以上個展を見てきたし、毎年出品する人人展には招待状を送ってくれていた。記録を見ると、2007年には京橋のギャラリー小野で個展を、2008年2月には三越前のギャラリートモス&砂翁でグループ展を見ている。この久しぶりに会ったグループ展では、少しやつれた感じだったが、病気をしていたけれどまた制作できるようになったと言われた。
 作品はキャンバスの表面に薄い金属板を貼って、レリーフ状に加工した抽象だった。ケレン味も衒いもない真面目な作品だった。人柄が現れていた。最後に会ったグループ展の作品は今までになく良いものだった。いい作品ですねと伝えたはずだ。
 大熊雅博さんは大きな評価を受けることはなく、ほとんど無名のまま56歳で亡くなった。この56歳まで作品を作り発表していった人生は、幸せなものではなかったかもしれないが、良い人生だった、肯定されて然るべき人生だったと思う。
 許可をもらって人人展の会場で撮影した大熊雅博さんの作品を紹介したい。




東京都美術館の壁の石膏ボードの規則的な穴が少しうるさい。