作品は覚えることができる

 ギャラリーに入っていくと片隅にいた作家が、××さん、去年も見てくれましたね、ブログ読んでますよと話しかけてきた。はて誰だったっけ? なかなか作家の顔も名前も覚えることができない。でも展示されている作品を見てすぐに分かった。この色は知っている。去年この同じ画廊の広いスペースで個展をやった人だ。あなたは確か中西夏之先生のお弟子さんでしたよね。いいえ、弟子ではなくて友達です。中西先生の友達だって、何とgreatな! 
 だいたい作家の名前も顔も覚えられないが、印象に残った作品は覚えている。年間2,000の個展を見ることをもう15年以上続けているから、かれこれ3万の個展を見たことになる。だからたいていのものは忘れてしまう。それでも印象に残った作品は覚えているのだ。
 考えてみれば不思議なことだ。いや強い印象を受けたことを覚えているのは当然のことかもしれない。逆に言えば覚えているくらいその作品から強い印象を受けたということだ。