梯久美子『昭和の遺書』を読む

 梯久美子『昭和の遺書』(中公文庫)を読む。芥川龍之介から始まり、2・26事件の首謀者磯部浅一北一輝太宰治山本五十六三島由紀夫美空ひばりなど、50人以上の遺書を集めている。

 2.26事件の首謀者・磯部浅一の遺書

 悪臣どもの上奏した事をそのまゝうけ入れ遊ばして、忠義の赤子を銃殺なされました所の 陛下は 不明であらせられると云ふことはまぬかれません 此の如き不明を御重ね遊ばすと 神々の御いかりにふれますぞ 如何に 陛下でも 神の道を御ふみちがへ遊ばすと 御皇運の涯てる事も御座ります

 今の私は怒髪天をつくの怒りにもえています、私は今は 陛下を御叱り申上げるところに迄 精神が高まりました、だから毎日朝から晩迄 陛下を御叱り申しております、

天皇陛下 何と云ふ御失政でありますか 何と云ふザマです、皇祖皇宗に御あやまりなさりませ、

 

 沖縄守備隊指揮官・太田実の最後の電文

 沖縄県民斯く戦へり

 県民に対し後世特別の御高配を賜らんことを

 

 浅間山荘事件の森恒夫の遺書

御遺族の皆さん 12名の同志はぼくのブルジョア的反マルクス専制と戦い、階級制、革命性を守ろうとした革命的同志であった。責任はひとえにぼくにある。

同志のみなさん 常に心から励まして下さってありがとう。お元気で。

父上 ぼくはあなたの強い意志を学びとるべきだった。強い意志のない正義感は薄っぺらなものとなり、変質したのである。お元気で

愛する人へ 希望をもって生きてください。

さようなら

荷物は坂東君に

 

 遺書は誰のものでも厳粛な気持ちになる。私はわざわざ遺書を書くほどの玉ではないから、せいぜい娘へ「さようなら」くらいか。