ホームレスの短歌

 朝日新聞12月8日の朝刊に「朝日歌壇」が掲載されていて、そこにホームレスからの投稿歌が二人の選者によって選ばれている。

(柔らかい時計)を持ちて炊き出しのカレーの列に二時間並ぶ
                 (ホームレス)公田耕一

 選評が

永田和宏)「柔らかい時計」はダリの時計を連想させるが、二時間という時の長さ。

(佐々木幸綱)住所欄にホームレスとあった。柔らかい時計はダリの時計。通常の時間とはちがう進み方をするのである。

 ホームレスにもインテリがいるのだ。しかし選ぶ者も評価される。二人ともダリの時計を連想しながら、佐々木はそれを「通常の時間とはちがう進み方をする」と捕らえている。
 さてこの「公田耕一」は本名だろうか。「耕田公一」かもしれない。
 同じ日の歌壇に選者の高野公彦は、アメリカの刑務所に入っている郷 隼人の歌を選んでいる。

風呂吹に藷粥(いもがゆ)、鮟鱇鍋などを思い浮かべる時雨るる夜は

 アメリカで殺人を犯し、たしか終身刑ではなかったか。彼は本名を使っていない。