女性の総合職という欺瞞

 各企業で女性の総合職を採用している。少し古い話かもしれないが、私が知っているのはT薬品とS化学、M化学あたりの例だ。いずれも女性の総合職を採用しているが、本気で採用しているとは思えなかった。ちゃんとした仕事を与えているとは思えないのだ。と同時に総合職の男たちが全国に転勤させられているのに、女性の総合職はほとんど転勤がないか、せいぜい東京近郊の研究所への移動だった。彼女たちも地方へ転勤させられたら退職すると言っていた。だいたいが無理なのだ。真の男女平等社会でないのに、形式だけ平等を騙ってもできるはずがない。夫婦で夫が転勤すれば妻は自分の仕事を捨てて夫と共に転居するが、妻が転勤しても夫はついていかないだろう。
 ただシンジェンタに吸収合併されて今はない静岡のトモノアグリカという会社は違った。ここの女性の総合職は本物の総合職だった。仕事の上で男女平等、その代わり男と同じに全国に転勤させられた。夜の宴会にも出席していた。なぜこの会社だけ女性の総合職が飾りでなかったのか。おそらく小さな会社なので優れた男子学生が集まらなかったのではないか。求人は男女を差別できないことになっているので女子学生も応募してくる。優秀な男子学生は一流企業にとられてしまうので、中小企業に応募してくる学生で優秀なのは女子学生なのだ。それでトモノアグリカは本気で女子の総合職を採用したのだ。彼女たちもそれを受け入れて入社してきた。
 だからできないわけではないのだが、男女平等にはほど遠い日本の社会で苦労しているのは彼女たちに違いない。