2006-01-01から1年間の記事一覧

山野麻里子展を見る

水天宮の三愛画廊で開かれている山野麻里子展を見る。墨とコンテで描かれたモノクロのドローイング。幅が2メートル以上ある大きな作品が3点。 広大な風景のようにも見える抽象。すばらしい。 3年ほど前、銀座のギャラリーライブ&モリスで彼女の初個展を…

ニホンカワウソの生息数

もう10年前になるだろうか。 ニホンカワウソ友の会の方と話をしたら、ニホンカワウソの生息数は6頭±3頭だろうとのことだった。 その時点で3〜9頭だ。もう繁殖できる数ではないという。 今は何頭くらいになっているのだろう。 ニホンカワウソ友の会http:/…

バイブを買いに

夏石鈴子に「バイブを買いに」という小説があり、地下鉄の駅近くのマンションの一室にある女性客だけを対象とした大人のおもちゃ屋へバイブを買いに行く話が紹介されている。 それは女性週刊誌などで話題になっていた地下鉄半蔵門線の半蔵門駅近くの店だろう…

吉田秀和訳の漢詩

吉田秀和の17年前のエッセイ「音楽展望」(朝日新聞、1989.1.24)から。 中国の古い詩とその吉田秀和訳。 別時容易見時難 流水落花春去也 天上 人間 別れはやさしく会うのは大変。 水は流れ花は落ち、春はゆく。 天上の人、地上に残った我々。

仕事の極意

仕事の極意を紹介したい。 仕事は一人ではできないが、人に頼ってもできない。

小春日和、またはへちま

小春日和、またはへちま へちま 収穫の秋にまだ花を咲かせている 恩寵のように再会の約束がなされ すぐに取消の通知が届いた ダイレクトメールと個展の案内状にはさまれて しばし狂乱の春よ 残酷な四月が他の季節にまぎれ込み 眠っていた欲望をかきたてる い…

岡本太郎の「痛ましき腕」

以下、彦坂尚嘉さんの文章を紹介します。 目黒美術館で、学芸員の正木基氏が中心になって朝日新聞社後援で『戦後文化の軌跡』展というものが開かれました。 私、彦坂尚嘉も出品し、シンポジウムのパネラーとしても出席しました。 私もこの展覧会に出品してい…

メッセージ

父が亡くなり、お盆の真只中とて荼毘にふしたあと中1日おいて葬儀だった。 葬儀の前日ふと眼にした富岡鉄斎の書が次のようだった。 ちなみに父も鉄斎も数えの89歳で亡くなっている。 「長生何必羨神仙」 長生何ぞ必ずしも神仙を羨まん 長生きしたので別に不…

インセスト・タブー

岡本敏子は岡本太郎美術館の館長をしていたが、しばらく前に亡くなった。 岡本太郎の存命中は彼の秘書をしていた。 また正式な養女だったが、一方実質的に夫婦だった。 彼らと何ら接点がないにも関わらず、そのことにイヤな感じを抱いた。 つまり養女と夫婦…

嵐山光三郎「おとこくらべ」

嵐山光三郎「おとこくらべ」(ちくま文庫)を読む。 6人の文豪の死の前後を描いた短編集。 取り上げられているのは、樋口一葉、ラフカディオ・ハーン、森田草平、有島武郎、芥川龍之介、北原白秋。 嵐山は傑作「追悼の達人」で文豪たちの弔辞をまとめた経験…

天の声、無意識

SF

20年ぶりくらいでスタニスワフ・レムのSF「天の声」を読み直した。 本当に読んだっけと思ったくらい何も覚えていなかった。 何日かかけて読んでいる途中、ある夜夢を見た。 ビルのエレベーターに乗り込んだ。中には見知らぬカップルが乗っていた。ビルは7階…

サリンジャー「エズメのために」の副題をめぐって

サリンジャーの短編集「九つの物語/ナイン・ストーリーズ」に「エズメのために」という短編が入っている。このタイトルの日本語訳がいろいろで微妙に違っている。ちょっと調べただけで次のようになっている。 エズメのために――愛と汚れ(武田勝彦、荒地出版…

書痙

2年近く前から右手人差し指がおかしくなった。 万年筆で文字を書こうとすると2文字目から3文字目くらいで指が突然曲がって、力が一切入らなくなる。 仕方なく人差し指を使わないで文字を書くがひどい字になってしまう。 万年筆のみに出る症状でボールペン…

難波田龍起

難波田龍起を1点2点と見ていた時は良い画家だと思った。 10年近く前か、世田谷美術館で回顧展を見た。 同じ様な絵が何十点も続く。 いっぺんに見飽きてしまった。 まじめな画家であることは疑いを入れない。 しかし不器用な画家だ。 決して面白くはない。

吉原治良展

竹橋の東京国立近代美術館に吉原治良展を見に行く。 具体美術協会のリーダー、アンフォルメルの画家としてミシェル・タピエに評価される。 始め具象画を描くがつまらない。一瞬アンフォルメルで輝き、ついで山口長男に近い抽象を描くが、山口の高さとは二回…

抽象が分からない

抽象絵画が分からないと言われる。それに対して、あなたはネクタイを選ぶだろう、ネクタイの柄は抽象ではないかと言う人がいる。つまり抽象を選んでいると言うのだ。 これは正しくない。優れた抽象画は人を感動させるが、ネクタイの柄に誰も感動しないからだ…

帰燕せつなき高さ飛ぶ

帰燕せつなき高さ飛ぶ ――山本弘、わが敬愛する画家の思い出―― 山本弘に初めて会った時、坂口安吾の「堕落論」を読めと言われた。私が19歳、山本さんが37歳だった。美人の奥さん(愛子さん)はまだ26歳。もう36年前になる。 ぼくは弟子はとらないから先生と呼…

久保理恵子の絵を見て

初めて久保理恵子の作品を見たのは1994年4月のなびす画廊だった。彼女の初個展ではなかったか。大きな横長の画面に一輪の黒い百合の蕾が一杯に描かれていた。「百合ですね」「分かりますか」という会話を覚えている。他に赤い花の作品もあり、DMにはこの作…

オリーブの木陰

オリーブの木陰 あの日遠い国からはるばるとあなたがやって来た ぼくはあなたを小さな公園に誘った 公園では紅梅が満開だった オリーブの木陰で あなたはぼくのためにポーズをとってくれた はにかんで 少し困って その時なぜ子供の頃の話をしたのだろう 近所…

友人の1周忌に詠める

友人の一周忌に 渦を巻く炎に乗って君は去り風越(かざこし)の峰木立さやげり 友人の住居址に立って 谷に向く君の姿に重ねれば朝ごとに見し君の視界が 酒瓶にひそと沈める黄なる実の焼け跡近く花梨立ちたり 黄金なる花梨をひとつ手に載せて業火と煙の記憶を…

吉行淳之介と倉橋由美子

吉行淳之介が好きだった。彼の過剰な自意識がなせる屈折した姿勢が好きだったのだ。(祝福を受けた主賓に似た姿勢で佇んでいる自分に気付くと彼は激しく舌打ちし、)。対して倉橋由美子は文体が好きだったのに彼女の姿勢は嫌いだった。自己陶酔に平気で溺れ…

東京の昔の風俗

吉行淳之介の「闇のなかの祝祭」を読んでいたら、夏女子社員の黒い脇毛が見えたと書かれていて、そのことに特別驚いていない。すると、1960年代に日本では、普通脇毛を処理しなかったのだろう。 1970年代はヒッピー文化の影響が強く、当時20代のカミさんも彼…

三岸節子と野見山暁治

三岸節子と野見山暁治が別々の著書で偶然同じことを言っていた。 二人ともフランスから日本に帰ってきたとき、こんなに湿っぽく色のないところでどんな絵を描いたらよいのだろうと途方にくれたという。 しかし実際には二人ともしっとりした色彩の優れた画家…

サム・フランシス

昔、サム・フランシスは輝いて見えた。 水墨画の影響を受けたという白い大きな色面が美しかった。 最近東京都現代美術館の常設展でサム・フランシスの壁面一杯の大きな作品4点を見た。 1室が彼の作品に囲まれているのだ。 それは驚くべき体験だった。 サム・…

ギュスターヴ・モロー

戦前、野見山暁治が芸大で学んだ頃、教授の言うとおりに描かなかった学生はその場で退学させられたという。 ギュスターヴ・モローはマチスとルオーを教えた。 この師と弟子には全く共通点がないように見える。 モローは神話の世界を美しく妖しく、ある種写実…

昭和史

半藤一利「昭和史」(平凡社)を読む。 大変面白かった。小説家の歴史書はいつも面白い。 天皇側近や重臣、軍の上層部の暗躍で歴史が作られていく。 かつて加藤周一が司馬遼太郎を、英雄が歴史を作っていくとする英雄史観だと批判した。 小説家の歴史書は面…

稲作の起源

大日本農会主催の講演会「水田稲作の起源」を聴講した。 講演者は昨年末に講談社から「稲作の起源」を上梓した池橋宏さん。 講演の骨子は、稲作の起源は根菜農耕から生まれ、多年生の野生稲の株分けから現在の田植えをする稲作が始まったというもの。 これは…

御衣黄

近所の公園で桜の御衣黄(ギョイコウ)が満開だった。 花びらの色がやや薄黄色で地味なようでいて花びらが大きく結構華やか。 ミツバツツジやザイフリボク、スミレも満開だった。

スタニスワフ・レム

SF

あまり皆がほめるのでビデオを借りて、やっと「マトリックス1」を見た。これは「ブレードランナー」じゃんと言うと、事情通がいや「攻殻機動隊」だと教えてくれた。で、それも見た。 もう40年も昔「SFマガジンベスト」で筒井俊隆の短編を読んで強烈な衝撃を…

サイスタジオにおける清水邦夫作品公演#1

サイスタジオにおける清水邦夫作品公演#1を見る。 いずれも清水邦夫が若いときに書いた戯曲を再演したもの。 「行きずりの人たちよ」 演出:清水邦夫・松本典子 清水邦夫が昔ラジオドラマのために書いた戯曲。 舞台での上演は初めてという。主演:水谷豊 語…