2006-01-01から1年間の記事一覧

無言館の絵

「ちくま」2006年8月号に小林亜星がエッセイを書いている。題して「行ってきました。」 私も無言館に行ってきました。静かな上田の町はずれに、ひっそりと立つ。何処か遠い国の教会のような建物がそれでした。(中略) 部屋に足を踏み入れた瞬間、私は何か…

山本弘遺作展の展評(5)

「異色の画家・山本弘」by伊藤正大 「『風狂無頼』思い出展」という見出しの記事が、3月9日付けの信濃毎日新聞に載った。下伊那郡豊丘村生まれの洋画家・山本弘(1930ー81)の友人たちが、飯田市内の画廊で開いた回顧展の話だ。 山本弘は、造形美術学園(現…

作間敏宏のインスタレーション

初めて作間敏宏の作品を見たのは今はもうない大田区久が原のガレリア・キマイラでの個展だった。キマイラは閑静な住宅街の中にある現代美術の画廊で個人の家の一部を展示スペースにしている。 玄関を入ると目の前の壁面に5ワットほどの電球が100個ぐらい円盤…

山本弘遺作展の展評(4)

「自己存在の証としての画、山本弘展」by匿名(K) 風狂無頼の芸術家とはまた何ともなつかしい響きを感じさせる表現になってしまったことか。円熟完成型の作家より未完、無頼、夭折、そして破滅型の芸術家好きという小児病質が抜け切らないわれわれ日本の観…

百科事典としての新書

フッサールに「厳密な学としての哲学」という本がある。岩波から翻訳出版されて120ページほどの小さな単行本だ。これは百科事典の「哲学」の項目の記載として書かれたという。 〔以下ウィキペディアからの引用〕 百科事典の項目立てには、大雑把に分類すると…

山本弘遺作展の展評(3)

「山本弘遺作展」by匿名 チューブから出したばかりのような絵の具が盛り上がる画面は、中間色の淡さがありながら野獣派的な激情を発散させています。長野県飯田市に住み、50年代に日本アンデパンダン展などに出品しましたがしばしば死に直面し、その合間のわ…

平野薫のインスタレーション

昨日、東京都現代美術館で大竹伸郎展を見る。以前ここで開催された横尾忠則展を思い出した。パワフルなことと品の良くないことが共通する。どちらも好きになれない画家だ。 しかし大竹の回顧展を企画した都現代美術館は評価できる。 いつもながら常設展がと…

山本弘遺作展の展評(2)

「山本弘遺作展ー素描」byワシオトシヒコ 予科練習生として太平洋戦争の敗戦を迎え、1981年、51歳でやっと自殺願望を現実化した画家の軌跡はまさしく、破滅型そのものだった。一人の生活者として絶えずつきまとう喪失感、しかし、戦後から本格的に取り組んだ…

山本弘「泉」作者の心象としての湧水である

山本弘「泉」by瀬木慎一 「何気ない」というこころの状態があり、そうした状態で描かれる絵がある。 この一点の絵は、おそらく、その種のものだろう。意図して描いたのではなく、ある心の状態がこのように描かしめたにちがいない。 日本の画家に特有の画法と…

竹下通り

竹下通りがあるのになぜ田中通りや中曽根通りがないのだろう。

提案

TOTOとINAXへ 水洗便所の表記を「大」「小」から「多」「少」へ変更することを提案します。 「大小」が便種を表すのに対して「多少」は水量を表しますから。

山本弘遺作展の展評(1)

「山本弘遺作展ー風狂無頼の画家」ーby井関能雄 副題に〈風狂無頼〉とあるように、若かりしころの奔放なまでの生きざまのスタイルを終生変えることなく、ついにはアルコール中毒が引き金となって51歳の生涯を終えた、これまではまったく世に知られることのな…

「無頼の画家 山本弘の現代性」

1994年7月11日〜30日、東京・京橋の東邦画廊で東京で初めての山本弘遺作展が開催され、読売新聞(担当:芥川喜好記者)が針生一郎さんに山本弘に関する寄稿を求め、7月28日の夕刊に掲載された。以下その全文。 山本弘という13年前に51歳で亡くなった画家の遺…

SM趣味

SM趣味がよく分からなかった。 以前電車に乗った時、隣でつり革に掴まっている若い女性がノースリーブだった。何と脇毛がもさもさ生えているのが見えた。 うわあ、いいものを見た! と思った時、彼女が私を見た。恥ずかしがって脇を隠すのかと思ったら、フン…

茂木健一郎

茂木健一郎「脳と仮想」(新潮社)を読む。 クオリア(質感)と仮想という言葉以外、やさしい日常語で新しい認識論を語っている。フッサールやメルロ=ポンティを楽々と乗り越えて。 天文学が哲学の宇宙論に取って代わったように、認知科学が認識論に代わり…

合掌の法則

両手を合掌の形に合わせます。これを正しい形とします。 合掌の形から人差し指を少しずらします。合掌の形はちょっと崩れましたが、これは簡単に直せます。大きな誤りではなかったのです。 次に右手の甲に左手の掌を重ねます。一見合掌の形に似ています。 で…

小島ゆかりが紹介する池永陽「少年時代」(双葉社)

「それが、伊藤さんの乳房の感覚よ」 いわれてみれば、そう感じられないこともなかった。手のひらにあたる風の塊は、女性の乳房そのものの感触といえた。達夫は小夜子の顔を凝視しながら、その感触を手のひら一杯で感じとった。良平の友人達夫の家は、民宿の…

柳森神社

千代田区神田須田町辺りを歩いていたら柳森神社があった。古い割には小さな小さな神社。神様に挨拶すべく参拝する。境内を見ると桜の木に名札が吊してあって「御衣黄」(ギョイコウ)と書かれている。 こんなところに御衣黄がある。来春は薄緑色の地味で変わ…

丸谷才一による吉田秀和と小林秀雄

朝日新聞に連載している「袖のボタン」で丸谷才一が書いています。(2004.11.9) この11月で「吉田秀和全集」全24巻が完結する。それをわたしは全集23「音楽の時間V」で知ったのだが、この千秋楽は現代日本文化にとって特筆すべき事件だと思った。生前の個人…

椎名其二

野見山暁治の「四百字のデッサン」(河出文庫)に椎名其二が紹介されている。「マビヨン通りー椎名其二」「椎名さんの借金ー森有正」あわせてわずか23ページ。 その分量で私たちは椎名其二について十分に知ることができる。忘れられない人となる。 20世紀の…

パトリシア・ゴッジ

高校3年の時に「かもめの城 Rupture」という映画を見て主演女優のパトリシア・ゴッジPatricia Gozziが好きになった。それは彼女が14歳の時撮られた映画だった。 後に東京の名画座で彼女が主演している評判の良い古い映画「シベールの日曜日」を見た。映画は…

コスモス

コスモスの根方の茎の太さかな

山鳩の天気予報

小学校5,6年生の時、担任の宮嶋先生が山鳩の天気予報は気象庁よりも当たると教えてくれた。 山鳩はデデーポポーと鳴く。その鳴き終わりで予報するのだという。 「デ」で終わる時、「デデー」、「ポ」、「ポポー」、それぞれの鳴き終わりが明日の天気を予…

年 齢

東京オペラシティギャラリーへ行った時のこと。 窓口の女の子から「65歳以上は半額です」と言われた。 いえ、まだ57歳ですと答えたが、ちょっと焦った。 しかし冷静になって考えれば、20代の女の子にとって50代も60代も一緒かも知れない。 そのことを60代後…

小松茂美先生

日頃お世話になっているKさんから、先祖代々伝わる尊円法親王の書についてその真贋を確かめる手だてはないだろうかと相談された。 尊円法親王は鎌倉〜南北朝の人。伏見天皇の第六皇子で出家してこの名で呼ばれた。また青蓮院とも。 書の大家で青蓮院流の祖だ…

丸山真男と吉川幸次郎、その他

丸山真男が「日本政治思想史研究」を発表した時、吉川幸次郎はそれを評して「お素人さんとしてはなかなか」と言ったという。 司馬遼太郎の歴史小説に対して、加藤周一は英雄史観だと批判した。 本居宣長論を書いた小林秀雄に「私には分かりませんでした」と…

タカサゴユリ

私が勤めている会社の近くに数十坪の空き地があった。 ある年の夏、突然その空き地の丈け高い草むらの中に点々と白い百合が咲きそろったことがある。ススキやヒメムカシヨモギ、セイタカアワダチソウがびっしりと生い茂った中に大輪の白い百合が咲いている。…

ル・カレ「偽装の棺桶」

もう30年以上前に見たテレビドラマがある。 NHK放映、イギリスのBBC制作、ジョン・ル・カレ原作、スタンレー・マン脚本だったと思う。 東ドイツ在住の住民を西ドイツに亡命させる話で、ドラマを展開させるエピソードがすべてラストのどんでん返しの伏線にな…

エフトゥシェンコの詩

高校生の頃見ていたアメリカの連続テレビドラマがあった。 題名は忘れてしまったが。 そのドラマは不評だったらしく、途中で打ち切られてしまった。 そのドラマの中で当時ソ連の詩人エフトゥシェンコの詩が紹介された。 その頃は今と違ってすぐ暗記できた。 …