小島ゆかりが紹介する池永陽「少年時代」(双葉社)

「それが、伊藤さんの乳房の感覚よ」
いわれてみれば、そう感じられないこともなかった。手のひらにあたる風の塊は、女性の乳房そのものの感触といえた。達夫は小夜子の顔を凝視しながら、その感触を手のひら一杯で感じとった。

良平の友人達夫の家は、民宿の経営が破綻して夜逃げをすることになった。別れの記念に、大好きな小夜子の乳房に服の上からちょっとだけでも触りたいという達夫の夢を、みんなで叶えてやろうと相談するのだが……。
奔放で情熱家の教師美樹が、小夜子と達夫を車に乗せて走る。達夫は小夜子の横顔を見つめながら、窓から手を出して風の塊を感じるのだ。小夜子の乳房は並の大人より大きいからと、時速70キロで走る美樹の姿が実に魅力的だ。


(以上引用終わり)
何て可愛いんだ。いい話だねえと娘に言うと、そんなことがそんなに嬉しいの、猫を触ってたほうがずっといいのにと。いやあ、男にとってそれが嬉しいんだよとちょっと引きながら答えたのだった。