百科事典としての新書


フッサールに「厳密な学としての哲学」という本がある。岩波から翻訳出版されて120ページほどの小さな単行本だ。これは百科事典の「哲学」の項目の記載として書かれたという。


〔以下ウィキペディアからの引用〕
百科事典の項目立てには、大雑把に分類すると「大項目主義」と「小項目主義」という二方式がある。「大項目主義」は、例えば文学でいうと、「近代文学」など大きなテーマの項目名のもとに、文芸の潮流や著名な作家・作品などについて一つの項目内で概観できるようにまとめたものである。時には数ページから数十ページにもわたる長大なものになる。逆に「小項目主義」は、「夏目漱石」「芥川龍之介」「自然主義」「吾輩は猫である」など個々の細かいテーマや事物ごとに項目を立て、それぞれ別個に解説を加えたものである。それぞれの長短を単純化すると、大項目主義では全体の概要を一まとまりにとらえることができるが、特定の作品や作家について調べるのには不向きであり、小項目主義は逆に個々の項目について知ることができるが、全体のまとまりに欠けるというように、一長一短がある。(中略)『ブリタニカ』の初版は大項目主義を取っていた。(引用以上終わり)


前記フッサールの小著もこの大項目主義によっているのだろう。日本でこの大項目主義を採用した例を寡聞にして知らない。ただ、岩波、中公、ちくま、新潮など各種の新書を見たとき、ある意味でまさにこれは大項目主義で書かれた未完の百科事典ではないかと思った。しかもこの百科事典は項目ごとに購入することができる。必ずしも体系立っていないとはいえ、何という便利な文献だろう。新書は百科事典だという所以である。