平野薫のインスタレーション

昨日、東京都現代美術館で大竹伸郎展を見る。以前ここで開催された横尾忠則展を思い出した。パワフルなことと品の良くないことが共通する。どちらも好きになれない画家だ。 しかし大竹の回顧展を企画した都現代美術館は評価できる。
いつもながら常設展がとても充実していた。2階の最初の部屋が荒木珠奈さんのインスタレーション だったのは驚いた。彼女は若い作家で意欲的に制作をしているが、現美の常設に1室を与えられることに驚いたのだ。前回までこの部屋はサム・フランシスの大作4点が周囲の壁を飾っていた。
来年1月からの企画展は中村宏だという。これは楽しみだ。


日本橋、京橋、銀座、外苑前の画廊を回って、関内の横浜市民ギャラリーへ「ニューアート展2006/糸と布のかたち」を見に行く。 目的は平野薫さんの作品。彼女はシャツやスカーフ、ブラジャーなどを1本1本の糸にほぐして展示するインスタレーションの作家。
2年前銀座のギャラリィKで初めて彼女の個展を見た。床一面にシャツをほぐして粗い刺繍のようになった糸が拡がっていた。その時はそのようなオブジェの展示かと思った。間もなく外から作家が帰って来て画廊の片隅に腰掛け、ゆっくりシャツの続きをほぐし始めた。それを見てシャツが糸に帰っていくことを表現しているのだと思った。死者が土に還っていくことを連想して涙が出た。
作家と話ができる状態ではなかったので、帰宅後自分の感想を作家にメールした。返事がきて、意図通りのことを理解してくれたと言われた。
今回もスカーフをほぐして部屋一杯に吊り下げていた。彼女の作品はすばらしいが、ほぐす作業をしている所を見ないと、なかなか制作意図を理解するのが難しいのではないか。


作間敏宏さんにしろ平野薫さんにしろ、優れたインスタレーションは見る者に考えることを促す。かつて建畠哲さんが日本のインスタレーションは皆お花畑だと言い、その通りなのだが、優れたインスタレーションもあるのだ。