椎名其二

野見山暁治の「四百字のデッサン」(河出文庫)に椎名其二が紹介されている。「マビヨン通りー椎名其二」「椎名さんの借金ー森有正」あわせてわずか23ページ。
その分量で私たちは椎名其二について十分に知ることができる。忘れられない人となる。
20世紀の初め頃からフランスに住み何度か日本に帰りながらもフランスで一生を終えたモラリスト。製本で生活費を得ながら孤高にわがままに暮らした人。
森有正を叱責して泣かせた人。友人に借金してそれで贅沢をし、返済を迫られると逆に軽蔑した人。ロマン・ロランの「大戦下の日記」に「彼は非常に聡明で、教育があり、洗練された礼儀と清潔さとを身につけている」と書かれた。


その後「パリに死すー椎名其二伝」という分厚い伝記が誰かによって書かれたが、椎名については野見山の23ページで十分だった。野見山の筆力の見事さ!