あの日遠い国からはるばるとあなたがやって来た
ぼくはあなたを小さな公園に誘った
公園では紅梅が満開だった
オリーブの木陰で
あなたはぼくのためにポーズをとってくれた
はにかんで 少し困って
その時なぜ子供の頃の話をしたのだろう
近所の小母さんが草刈りをしていて鎌鼬にやられたことを
鎌鼬が鎌を持った鼬だというのは迷信で
本当は一瞬現れる真空が肉を切るのだと
小母さんは教えてくれた 鎌鼬に切られた傷は
深いけれど血が出ないのだとも
いつ どこに現れるか分からないのでは
〈逃げられないじゃんか〉と子供は恐れた
あなたが再び遠い国へ去った後
ぼくは一人で小さな公園を訪ねた
紅梅はもう青葉を繁らせ始めている
あの日と同じにオリーブは
不思議な色の葉叢を光らせている
ああ その時不意に
オリーブの木陰の
あなたの形の真空が
ぼくを切り裂く