長野県東御市梅野記念絵画館の「館所蔵品精選展 令和6年度新規収蔵品を含めて」に、白鳥映雪、吉岡憲らとともに山本弘の作品が2点展示されている(6月8日まで)。
収蔵された山本弘作品は、「流木」と「銀杏」、どちら山本弘の代表作で、F20号(72.7cm x 60.6cm)の大きさだ。
「流木」
流木は普通、台風などによる洪水が引き起こす濁流に流される木だ。この絵では赤の中に白い形が見える。濁流は本来茶色〜茶褐色をしている。それがここでは赤く描かれている。これは血の濁流の中を流されている流木なのだ。白い形が流木で、それは画家山本弘本人に間違いないだろう。自分を血の濁流に流されている流木と捉えているのだ。この流木は骸骨にも思える。終生、酒浸りで深いアル中に苦しみ、生前誰からも認められることのなかった山本の生活を象徴的に描いている。
「銀杏」
イチョウの木の根元を描いている。おそらく夜だろう。背景の暗い紺色からイチョウの幹が浮き出ている。暗い紺色に青が混じり幹の輪郭を明るい空色が縁どっている。単純な造形だが、なぜ夜のイチョウのそれも根元を描いたのだろうと不思議だった。それが分かったのは奥村土牛の「醍醐」を知ったときだ。土牛は醍醐寺の満開の豪華な桜を描いている。「銀杏」は「醍醐」の構図を使っている。「醍醐」の桜の華やかな構図を引用して山本は夜のイチョウを描いたのだろう。土牛とは異なり、決して華やかではない暗い夜にすっくと立っているイチョウの力強い姿を。これも山本弘自身の象徴的な姿なのだ。
(※写真はいずれも久保山功氏による)
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「館所蔵品精選展 令和6年度新規収蔵品を含めて」
2025年4月12日(土)-6月8日(土)
930―17:00(月曜休館)
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東御市梅野記念絵画館
長野県東御市八重原935-1 芸術むら公園
電話0266-61-6161