模索舎という書店へ行ってみた

 先月朝日新聞模索舎という名の書店が紹介されていた。まだ営業しているんだと驚いた。模索舎は40年ほど前何度か出入りしていた。客として本を買っていただけだが。新宿の目立たない片隅に出店していて、政治的に過激な本を扱っていたという印象がある。政治の季節の退潮とともにすでに店を畳んでいたと思っていた。新聞に紹介されていた住所を頼りに出かけてみた。
 後でもらった模索舎のフリーペーパー「模索舎月報」に、「ミニコミ・小流通出版をとりあつかう本屋」とあった。なるほど。狭い店内にはまるで古本屋のような感じに本が並べられている。しかしどれも古書ではない。値段も定価がついている。マイナーな音楽CDもあった。三上寛のCDのアルバムも何枚が並んでいた。
 先の「模索舎月報」に新着情報が紹介されていた。その分類を見ると模索舎の性格が少し分かるだろう。「党派・政治団体」「全共闘」「天皇制・皇室」「反グローバリズム」「戦争責任」「労働・労働運動」「社会運動総合誌」「マルクス主義社会主義思想」「思想・哲学」「原発・核問題」「食・農・くらし」「部落・狭山裁判」「人種問題・差別」「中東」「北米・アメリカ」「アジア」「ジェンダーセクシャリティ」「ルポ・時事・歴史」「カルチャー」「文芸・詩」「出版・読書」「音楽」「美術」「旅・街」「映像・映画」となっている。ユニークでおもしろい分類だ。
 「分類は客観的なものではなく、人間の主観的なものに基礎をおく」と言っていたのは渡辺慧だった(渡辺慧『認識とパタン』岩波新書)。そのことがよく分かる事例だ。
 40年前にはここで『世界同時革命ゲリラ教程』というようなタイトルのパンフレットを購入した。かなり過激な内容だった。そのいくつかはまだ憶えているけれど、ここには書かない。もちろん実行したことはなかった。
 40年振りに探し当てた模索舎で、私が購入したのは、「レクチャー 第一次世界大戦を考える」という叢書の岡田暁生著『「クラシック音楽」はいつ終わったのか?』(人文書院)という本だった。副題が「音楽史における第一次世界大戦の前後」という。この歳になれば軟弱になるのはやむを得ない。(大江健三郎がどこかで引用していたオーデンの詩「できはしないとぼくは言った。もう鳥でも子供でもないんだから」をちょっとだけ思い出す)。
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模索舎
東京都新宿区新宿2-4-9
電話03-3352-3557
http://www.mosakusha.com
営業時間11:00〜21:00(日曜のみ12:00〜20:00)