練馬区立美術館の中村宏展

 練馬区立美術館で中村宏展「タブロオ・マシン[ 図画構成] 中村宏の絵画と模型」が開かれている(9月5日まで)。



 中村宏は1932年静岡県浜松市生まれ。初めルポルタージュ絵画という社会的な絵画を描く。砂川闘争を描いた名作が作られた。それはリアリズムとは異なり、シュールレアリズムの傾向を帯びていた。さらにモンタージュの技法を取り入れ、列車や飛行機、女学生などを組み合わせた不思議な画面を作っていく。列車に乗っている修学旅行中の女学生たちは皆一つ目だったりする。また雑誌の挿絵を描き、グラフィックの仕事も数多くこなしている。1970年代の若者たちのカリスマでもあった。
 そして1990年頃突然、工事の時に見かける立入禁止の黄色と黒の段だら模様を描き始める。これが不思議ときわめて美しい。「立入禁止」あるいは「限界表示」として描き続けられる。ついで「鉄道ダイヤグラム」が登場する。ダイヤグラムとは鉄道の運行表示の「線−グラフ」なのだが、これも成功する。ただダイヤグラムの成功は立入禁止とは異なり、ダイヤグラムというモチーフの成功ではなく中村の描写力に負っていると思われる。
 中村は幸福な画家だ。3年前にも東京都現代美術館で個展が開かれたし、1997年にもこの同じ練馬区立美術館で「池田龍雄中村宏展」が開かれたのだった。今回の個展に合わせて、京橋のギャラリー川船でも「中村宏展−−未発表小品」が開かれる(8月23日〜9月4日)。


練馬区立美術館
東京都練馬区貫井1-36-16
電話03-3577-1821
http://www.city.nerima.tokyo.jp/manabu/bunka/museum/
中村宏
2010年7月25日(日)〜9月5日(日)
10:00〜18:00、月曜日休館
観覧料:一般500円(図録も500円)


ギャラリー川船
東京都中央区京橋3-3-4 フジビルB1
電話03-3245-8600
http://www.kawafune.jp/