片山杜秀・佐藤優『生き延びるための昭和100年史』を読む

 片山杜秀佐藤優『生き延びるための昭和100年史』(小学館新書)を読む。これが実に面白かった。片山杜秀は日本政治思想史研究者、佐藤優は元外務省のインテリジェンス。二人が、「敗戦の断絶と反復」、「大衆の誕生と変遷」、「天皇家の昭和100年」、「日米関係と世界秩序の行方」というテーマで対談をしている。

 戦前の社会情勢から戦争について語られる。そして戦後の日米同盟について、

佐藤優  (……)戦後は日米同盟を結んでいまに至るわけですが、一つ注意すべきことがあります。「戦争の反省から、自由と民主主義と人権を掲げて国を立て直した」という、多くの人が信じている話はあくまで顕教の部分、建前だということです。それを踏まえて密教の部分、つまり本音は何かを考えなければならない。現代の日米同盟における密教=本音は、アメリカと二度と戦争しないために同盟を結んでいるというだけのことですよ。

(中略)

佐藤  密教の部分でわれわれ外交官が考えるのは、アングロサクソン(アングロ・アメリカン)は戦争に強いし、敵と認定した者に対してはきわめて残虐なことも平気でやるということです。戦前の日本人は、アメリカ人がここまで残虐な連中だと理解していたでしょうか?

片山杜秀  いや、していないでしょう。そこはやはり、米英に対する甘さがあって、例えば日英同盟時代にも、イギリスは紳士国で、それと仲がいい日本海軍もなぜか紳士で、逆にドイツびいきの陸軍は野蛮で、とそういう価値観でしたから。

佐藤  (……)アメリカは敵と認定したら、東京大空襲のようなことを平気でやってしまう。一晩に通常爆弾で10万人以上も焼き殺すなんて、空前絶後です。

片山  さらには広島、長崎に原爆を落としました。

佐藤  (……)だから、そういうアメリカと二度と戦わないことが戦後の“国体”に組み込まれたんです。そのために、ジュニアパートナーとして日米同盟を結んだ。現在の日米同盟はそのように理解すべきでしょう。

 

 佐藤は同志社大学神学科卒業のクリスチャンだからキリスト教信仰に詳しい。戦後のアイゼンハワー大統領は長老派だった。これはプロテスタントのカルバン派で、長老派の大統領はウッドロウ・ウィルソンアイゼンハワー、トランプの3人だけだという。カルバン派の大統領は逆境に非常に強く、突拍子もないことをしでかす傾向がある。自分の使命感を追求し、本質的には決して反省せず、柔軟性に欠ける。神の声が聞こえてしまうのでしょうと佐藤は言う。石破首相もカルバン派だという。

 ケネディとバイデンはカソリックだった。カソリックの大統領には、一種の普遍主義が染みついている。ケネディもバイデンも自分は絶対に間違えていないと思えてしまう。

 フーヴァーとニクソンはクエーカー教徒だった。

 上皇の退位についても興味深い指摘がある。また女性天皇についても批判的で、教えられること多々だった。