出口顕『ほんとうの構造主義』を読む

 出口顕『ほんとうの構造主義』(NHKブックス)を読む。フランスの戦後の思潮、構造主義四銃士と呼ばれた文化人類学レヴィ=ストロース、思想史家ミシェル・フーコー、文芸批評のロラン・バルト精神分析家のジャック・ラカンの思想を取り上げて構造主義を解説している。

 しかし、入門書とは言え構造主義は難しい。

 「はじめに」より、

 構造主義では個々の要素や事項よりも、あるいは主体的・意識的にふるまう個人よりも、個に先立ち個の意味を決定する関係性が強調される。この関係性が個々の要素の意味を決定するからである。きわめて雑駁な物言いだが、この関係性が構造ということになる。

 

 本書の読書中、昔読んだ蓮實重彦大江健三郎論を思い出した。蓮實の大江健三郎論も構造主義的な文芸批評だったのだろう。その本は読んでいて虚しいものだった。大江の主張する個々の事項よりも、些末な関係性が指摘されていた。

 レヴィ=ストロースの『悲しき熱帯』は面白かった。南米の未開社会を調査して、そのナンビクワラ族の文化を分析していた。交差イトコ婚の仕組みや、マテ茶の飲み方も興味深かった。それからすぐマテ茶を買って、以来たまに飲むようになった。

 ロラン・バルトは『零度のエクリチュール』、『表徴の帝国』、『明るい部屋』、『記号の国』を読んだことがある。『記号の国』で皇居について、東京の中心は皇居で、そこは誰も入ることができない空虚な中心だと書かれていたのが面白かった。

 ミシェル・フーコーは『言葉と物』、『マネの絵画』を買って持っているがまだ読んでいない。

 ラカンは解説書を読んだくらいだ。

 総じて構造主義者はレヴィ=ストロースを除いてあまり興味をもつことができない。構造主義の登場によって過去の哲学思潮とされたサルトルメルロー=ポンティの方がはるかに豊かな世界を論じていると思う。本書を読んでとくに構造主義に魅力を覚えることはなかった。