己を知るということ

 己を知るということは難しい。
 井上靖の晩年、ノーベル文学賞の発表のある時期、毎年井上を囲んで「まあだ会」という井上担当の編集者たちが作る会が開かれていた。井上靖ノーベル文学賞を受賞するのは「まあだかい」と待ちながら、受賞の知らせが届くのを待っていたのだという。
 早川書房の社長が、うちの会社も翻訳書がたくさん揃ったので、世界文学全集を企画してもいいのではないかと、部下に指示したことがあった。
 己を知るということは難しいものだ。