中国のコピー商品との闘い

 中国へ農薬の殺菌剤を輸出している会社から相談を受けたことがある。その会社の主力商品である殺菌剤が中国で評判がよく、当然のようにコピー商品が出回っている。初めはSONYをSOMYとかSONNYとか表示したやり方で名前を真似ていたが、その内に同じ名前で売るようになり、果てはパッケージデザインも真似し始めた。それも本物の商品を撮影し、写真製版で精巧なものを作っている。絶対に真似られないデザインを考えてほしいと言われた。
 1週間くらいで新しいデザインを提案した。殺菌剤は粉末で、それをなんていうのだろう、透明なポリ袋みたいなのに入れている。カラー写真や商品ロゴ、会社名のロゴなどが印刷されているのだが、透明な袋に印刷するために最初に全面を白く印刷している。その上に先に言った写真やロゴを乗せているのだ。新しいデザインは白地にごく小さく商品ロゴをヌクというもの。上に重ねる写真やロゴからも同じようにヌク。こうするとその部分のみ袋は透明になり、中の殺菌剤の色がわずかに見えることになる。見た目はほとんど変わらないが、これを写真撮影して製版すると、前回のように精巧なコピーは不可能になる。袋を透明にした部分の再現はほとんど不可能だ。
 自信を持って提案し、クライアントの担当者も感心してくれた。半年後、同じパッケージのコピー商品が中国市場に出回り始めたという。一体どうしてそんなことが? 担当者の話によれば、どうやらパッケージの印刷会社が本物のパッケージを横流しをしているらしいとのこと。これではどうしようもないと引き下がったのだった。アイデアは良かったのに。