読売新聞文化部ほか編『文庫で読む100年の文学』(中公文庫)を読む。編者は正確には、沼野允義、松永美穂、阿部公彦に読売新聞文化部の街田晋哉。読売新聞の連載コラムで、100年の世界文学を文庫(ペーパーバック)に絞って紹介するというコンセプトで、2020年10月から2022年3月まで掲載した。沼野と松永と阿部が世界文学から60冊を選び、50人ほどの作家や研究者たちが文庫にして見開き2ページで紹介した。文庫にまとめるに当たって、読売医新聞文化部の街田晋哉が一人で日本文学から40冊を選び、解説して100冊とした。
巻末の座談会で街田が言っている。「手に取りやすい値段の架空の世界文学全集ができると考えました」。この企画は大変面白くできていた。選ばれた100冊のうち私が読んだことのあるのはやっと40冊未満だった。
本書を読んで私も読まなければと思ったのが、プルースト『失われた時を求めて』、ブルトン『ナジャ』、ケン・リュウ『紙の動物園』、古井由吉『槿』、大岡昇平『レイテ戦記』、村上春樹『1Q84』、中上健次『枯木灘』あたり。プルーストは「コンブレ」を読んだだけ、ケン・リュウと古井由吉は所蔵しているのにまだ読んでない。
執筆者へのアンケートで、文庫化してほしいおすすめの本は? の問いに多くの作家がガルシア=マルケス『百年の孤独』を挙げている。アンケートの回答が2023年の3月だったので、その後ハヤカワ文庫から文庫化された。
ナタリー・サロートを挙げている人や、ムージル『特性のない男』を挙げている人がいた。
校正ミスの指摘をひとつ。96年に日本の出版界が約「2兆65000億円」というのは、0が一つ多かった。
