日本橋高島屋S.C.本館6階 美術画廊Xの松本陽子展「熱帯」を見る

 東京日本橋高島屋S.C.本館6階 美術画廊Xで松本陽子展「熱帯」が開かれている(11月29日まで)。松本は1936年東京都生まれ、1960年に東京藝術大学美術学部油画科を卒業しているベテラン画家だ。1991年に国立国際美術館で個展を、2005年に神奈川県立近代美術館鎌倉で二人展、また2009年に国立新美術館でも二人展を開いている。

 私も2017年のヒノギャラリーでの個展を見てブログで紹介している。その時、次のように書いていた。

 

 今回の個展がすばらしかった。緑色を主体に画面を作っている。「オイルパステルの線描が……画面を縦横に走り……」、作品に激しい動きを与えている。緑が強風に揺れる木々の葉叢のようにも見え、なだれ落ちる水流のようにも感じられる。強い動きと同時に、官能的ですらある鮮やかな色彩が見る者を魅了する。優れた抽象作品に出合った思いだ。

 

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 しかし今回はそこまで高く評価できなかった。画廊が作成したパンフレットで松本が書いている。

 

ピンクのアクリル画を精力的に制作していた只中、「いつか緑の絵を描きたい」と、あるカタログにコメントを寄せた。今がその時だと決意したのは、2000年を超えた頃だった。ピンクが私にとって約束された色であるならば、緑は宿望の色といえるかもしれない。憧れの色彩を手にした私は、ただ純粋に自身が求める流麗で拡がりのある空間を追いかけた。緑はそれに応えてくれるに相応しい色であった。と同時に、いまだ創作意欲を刺激し続ける、やはり魅惑の色彩である。

今、白を基調としたピンクの油彩画にも取り組んでいる。それはまるで、緑が導いてきたかのように再び私の前に現れた。一度は自分のものとした色彩が今度はどんな世界を見せてくれよう。その期待が私をまたキャンバスへと向かわせる。

 

 白を基調としたピンクの油彩画は、緑のそれには及んでいないのではないか。緑の油彩画も4年前の感動には及ばなかった。85歳という私より一回り上の大ベテランだから、私がこんな遠吠えをしても屁とも思わないだろうけど。

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松本陽子展「熱帯」

2021年5月26日(水)―11月29日(月)

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日本橋高島屋S.C.本館6階 美術画廊X

東京都中央区日本橋2-4-1

電話03-3211-4111(代)